horahuki

狼チャイルドのhorahukiのレビュー・感想・評価

狼チャイルド(2017年製作の映画)
4.0
ブラジル版『おおかみこどもの雨と雪』
これもめちゃくちゃ面白かった!!

シッチェス映画祭2018公開作です。
期待度的には『怪怪怪怪物!』『リターン・オブ・ジーパーズ・クリーパーズ』が圧倒的で、他は消化試合的な感じで思ってたんだけど、サラッとこんな面白い映画ぶち込んでくるなんてシッチェス映画祭の本気度が凄い!!

タイトル通り狼の子どもが生まれてうんちゃらって話なんですけど、そんなよくあるB級映画っぽい外観ながら親と子のドラマとして非常に重厚な作品になっていて、エンドロールが始まる頃には魂が抜かれたような、高揚感とか喪失感とか遣る瀬無さとか色んな感情がないまぜになったような余韻が残る素晴らしい作品でした。

本作は主人公を中心に前半と後半で7年の時を経た一大ドラマとなっており、狼こどもが生まれるまでを描いた前半と、7歳となり人間社会で暮らす狼の少年の姿を描いた後半の二部構成となっています。

貧民街に暮らし職も頼れる人もないドン底の主人公(黒人女性)が、高層マンションに住む金持ちで若い妊婦のシッターとして雇われるところから物語は始まります。彼女は行きずりの男との子を妊娠したために実家を追い出され逃げてきた身。物質的には豊かな彼女だけど、誕生日を祝ってくれる家族も友だちもおらず、心の中は冷え切っている。そんながらんどうな2人が人種の壁を超え互いに惹かれ始める。

ブラジル情勢は良くわかりませんが、貧民街を橋で隔てた向こうには豊かな街が広がっており、貧富の差の大きさ・根強さを感じさせる。そんな中、底辺かつ黒人の主人公と裕福かつ白人の妊婦が結びつくというのはどこか象徴的。そして血縁、種族、人種といった垣根・しがらみを取っ払い本当の子ども以上に愛情を注ぐ主人公の姿が単なる血の通わない親子としてのドラマだけではなく、互いを愛するためには何が最も重要なのかという社会派テーマをも代弁してくれてる。

そしてそんな様々な事柄を内包した狼こどもは社会に対する弱者からの咆哮として神より授かった存在であり、彼を未来へと繋ぐリレーは2人の間の親子愛を超えて、人類の未来に託された希望のようにも感じました。けれども彼を彼のまま生かすことのできる社会なんて存在しない。周りと違うものは排除され迫害される。それ故に主人公は神の子である彼に対して「人間」そして「社会に染まること」を求め、さらにより強い制約を与えてしまう。それが悲劇へと繋がっていくわけです。

正しかったのかどうかはわかりませんが、例え間違っていたとしてもそこにあるのは本物の愛情であり、子を守りたいという母の強さ。だからこそ非難することは決してできないという辛さ…。上映時間がかなり長いのが残念ですが、時間を割いて描いた事柄がしっかりと物語の深みへと繋がり、ラストの圧倒的余韻をも生み出してるので私的には全然アリ。面白かったです♫
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