ジョニー・トー監督の香港ノワール。
深夜未明の香港・尖沙咀。ギャング組織のボス・マーの息子が何者かに暗殺され、CIDが捜索に当たる。捜査組織犯罪対策課のサー刑事は、PTU協力のもと、マーの子分4人組に奪われた拳銃を捜す。
「何発か撃っとけよ。報告書も見栄えがいい。」
ジョニー・トー監督の代表作の1つである傑作『ザ・ミッション 非情の掟』に近い、ケレン味たっぷりの香港ノワール。
ギャング2大勢力の抗争を背景とする殺人事件が発生した香港の一晩が、非番中に奪われてしまった拳銃を捜す組織犯罪課の刑事、深夜の巡回任務にあたるPTU、ギャング組織のボスの息子の殺人事件を捜査するCIDの3視点から描かれていく。
この余白の多い世界観には、独特の味わい深さがある。特徴的なのは、セルジオ・レオーネ監督のマカロニ・ウエスタンを彷彿とさせるじっくりたっぷり設けられた間と顔のアップショットの多用、青黒調のダークでクールな映像、最小限に抑えられた会話&大人の色気が漂うウィスキーブルース(?)。深夜の香港の街を徘徊しているかのようなゆったりとした時間の流れが心地良い。
異なる思惑を抱える全ての勢力が一同に会するクライマックスのメキシカン・スタンドオフが見事。別々のエピソードが繋がるというストーリー上の興奮もあるし、スタイリッシュなガンアクションシーンとしても逸品。スローモーションで演出された白い発砲煙が、暗闇に良く映え、エロい。
それにしても、バナナの皮🍌の使われ方が凄い。追跡中にバナナの皮に滑って意識を失い、大切な拳銃を奪われるという漫画みたいな展開はアンビリーバボー。他にも、くすっと笑えるシュールなユーモアが度々挟まれる。
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