ハリィしろかわ

フロントランナーのハリィしろかわのレビュー・感想・評価

フロントランナー(2018年製作の映画)
3.6
【シネマメモ帖 「フロントランナー」は自業自得のブラックコメディーである。 】

先行試写会で鑑賞した本作。
1988年の米国大統領選挙に立候補していたゲイリー・ハート(演じるはヒュー・ジャックマン)は、当選確実と言われながらも自身の「女性問題」に足元をすくわれ、やがて失脚していく。
その顛末を、ゲイリー本人とその家族、ゲイリーの選挙スタッフ陣、新聞記者等のマスコミ陣それぞれの立場から描いた作品。
一言で言うと、「下世話な「ペンタゴンペーパーズ」」みたいな内容だった。

観終わった後に思ったのだが、日本の宣伝だと、
「有能な政治家が何者かのワナにはまり、スキャンダルの濡れ衣を被せられた。罠をしかけたのは誰だ!?」
みたいな政治サスペンス風に描いているけど、いやいや、実際はゲイリー自身の女癖の悪さによる「自業自得」、ただそれだけです…
本国でのポスターの方が本作の内容を明確に表しています。
そう、これはブラックコメディーとして笑ってあげた方がいいと思うんですけど…😅

とにかくゲイリーは、大統領選挙中に「あんなこと」しておいて、「政治理念や政策がしっかりしていれば、ゴシップ記事なんかどうってことない!」と、あまりにも詰めが甘すぎ。
そりゃ選挙スタッフ陣も頭抱えるわ…

やがて、スキャンダルが公になり、奥さんに事実を告白するゲイリー。
当然、奥さんにこっぴどく叱られるゲイリー。
このときのゲイリーを演じているヒュー・ジャックマンにかつてのウルヴァリンやバーナムのような堂々とした姿は微塵もない。

また、本作で印象的だったのは、ゲイリーに対する男女間の考え方の違い。
劇中でゲイリーの理想に共感する若い新聞記者が「スキャンダルの疑いがあるけど、政治家としては立派」と擁護すると、
先輩の女性記者は「女癖のワルさは、女性蔑視のあらわれ。もし大統領になったら、女性問題含めて、自分の都合の悪いことは隠蔽するに違いない」と鋭い視線でかなり辛らつに批判。
確かにそうかもと実感。
そして、男は男に甘い…反省。

あと、実は本作では、問題の「スキャンダル」描写はほとんどない。
せいぜいゲイリーが隠れてコソコソと公衆電話かけていたり、別宅に恋人を入れた瞬間の写真が出た程度。
これは、ゲイリー本人(存命中)からの注文およびヒュー・ジャックマンへの配慮かもしれない。
もし、主演がマイケル・ダグラスとかだったら、スキャンダルシーンは「これでもか!」っていうくらい濃厚な濡れ場を展開していただろうな、と勝手に邪推。

そして、本作のラスト
「ゲイリー本人は今も夫婦生活を続けている」
とコメントが出た瞬間、
「嗚呼、こりゃ一生奥さんに頭上がんないだろうなぁー」
と思わずにいられない。
これをブラックコメディーと言わずになんと言う?

#フロントランナー
#ヒュージャックマンかっこいい
#映画好きと繋がりたい
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