1988年、アメリカ大統領選挙。その最有力候補(フロントランナー)であったのにもかかわらず、ある理由で失脚してしまった上院議員ゲイリー・ハートの顛末を追った物語。
1988年の選挙というと、8年続いたレーガン政権が終わり、父ブッシュが勝利した年の話です。
ヒュー・ジャックマンも政治ドラマも好きなので楽しみにはしていたのですが、ゲイリー・ハートって日本だとWikipediaの記事すらないので、彼がどういう人物なのかあまり知らないまま観に行きました。
感想としては、良くも悪くも淡々とした映画という感じ。
最後まで見ると、なぜこのゲイリー・ハートという人物を題材にしたのかという意図が分かってきます。
彼は時代の過渡期についていくことができず、翻弄されてしまった政治家でした。
彼の不倫報道が大々的にマスコミに取り上げられたことで、ハートは一転窮地に追い込まれてしまいます。
今でこそ珍しくもない話ですが、その時代では政治家の能力とプライベートは無関係というのが暗黙のスタンスだったようです。
ハートは再三「プライベートではなく政策について議論してほしい」と訴えますが、世論は加熱する一方。
1988年の選挙は、政治家にとって公私の境目が失われてしまった、時代の転換点となる選挙だったのです。
このテーマ自体は意義深いし、現代にあって描く価値のあるものだと思います。
ただ、映画としてはもう一歩踏み込んで欲しかったなという気が。
物語はハート目線で描かれるのでなんだか同情的に見てしまったんだけど、スキャンダルによる苦境は言うまでもなく彼の自業自得です。
もちろん、当時はそこを突かれるという発想さえ無かったのでしょうけどね。
ほかの議員や過去の大統領も当たり前のように不倫している、という旨の台詞もありましたし。
でも彼に非があるという時点で、メッセージとしてはやや訴求力に欠けます。
ハートの政治能力が優れているというのも台詞で説明されるのみなので、もっとそんな姿を描いてくれればもっと考えさせられる内容になったと思います。
あと、マスコミの動向だけでなく当時の一般市民の反応がもっと見てみたかった。
誰を悪人にしようとしているわけでもなく、あくまで疑問を提起するという文脈で描いたという点では一定の意義を持った作品だと思います。
展開は地味だけどヒュー・ジャックマンの存在感のお陰でなかなか惹きつけられました。
あとこれはネットで見ただけなんだけどハートって一度撤退したあと予備選に再出馬したらしいんですよね。そこ詳しく知りたいんだけど。