MasaichiYaguchi

マダムのおかしな晩餐会のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

マダムのおかしな晩餐会(2016年製作の映画)
3.5
「嘘から出たまこと」という諺があるが、ある事情でミステリアスなレディに仕立て上げられた裕福なアメリカ人夫婦に仕えるメイドが引き起こす恋の空騒ぎは、富裕層の虚飾と傲慢を炙り出し、如何に自分らしく幸せに生きるかということを問うてくる。
主演のトニ・コレット、ハーベイ・カイテル、ロッシ・デ・パルマという個性溢れる演技巧者なキャストが織り成すこのロマンティックコメディは、瀟洒な屋敷を舞台に豪華なディナーや華やかなファッション等、セレブレティな雰囲気が満ちているが、そこには鼻持ちならない胡散臭さがあって、メイド・マリアの〝自然体〟とコントラストを成していく。
このコントラストの典型的なものが、寡婦のマリアに訪れた〝純〟な恋に対する、夫ボブの教え子への火遊びに対抗するかのような女主人アンの不倫。
純と不純のコントラストは、やがて疚しいことをしている側に嫉妬心を目覚めさせ、横槍を入れさせていく。
果たして嘘と勘違いから始まったブラックな笑いに彩られた恋愛騒動劇は、マリア、アンとボブの夫妻にどのような結末をもたらすのか?
何か〝憑き物〟が落ちたようなラストが心地良い余韻を残します。