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ある日本の絵描き少年のarchのレビュー・感想・評価

ある日本の絵描き少年(2018年製作の映画)
4.0
ほとんど全編を年代ごとの"絵柄"で構成して、描かれるある漫画家志望の物語。子供時代は塗り絵のような画で、次第に漫画のような画に変化していく、といった感じで画面の映像が人生の進捗とシンクロして進んでいく。そこには絵の技量が反映されたり、絵柄=その人の個性の反映であったりと、少年の周りの全てを絵にしてしまう試みは面白い。ルックだけで言えば最近の『チップとデール レスキュー大作戦』に近いグロテスクな絵柄の混在が行われていた。

作品の骨子としては夢追い人の普遍的なストーリーがある。だが、そのストーリーを飾り立てる上記した演出が本当に見事。特に技術が上がったものの、かつて目指していたわけではないエッチな絵ばかりを書いている状態に技術と夢が決して結びつかない現実が如実に表されていた。
まさるとしんじの関係、どこか「ルックバック」を思い出させるものだが、まさるの個展で絵柄や技術が変わらず「好き」を描いているのを見せられた時、「夢」や「成功」ってなんなのか考えてしまう。「漫画書きたい」と「漫画家になりたい」はイコールではないんだよな。
あのラストでは「幼なじみも頑張ってるし頑張ろう」ぐらいのニュアンスしか描けてなかったようには感じるが、どうか「夢」をしんじには叶えて欲しいと思った。
良い短編作品でした。
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