TAK44マグナム

一文字拳 序章 -最強カンフー少年対地獄の殺人空手使い-のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

4.3
紅蓮の蹴撃が狂気を粉砕!
退屈な日々にぶちかませ!
唸れ、80年代の拳!!


カナザワ映画祭2018期待の新人監督賞を受賞、PFFアワード2018にて観客賞を受賞した本格的格闘ヴァイオレンスアクション。
自主映画とは思えないハイクオリティなバトルアクションが公園や川辺で炸裂しまくる快作です!

雷鳴のようなキック!
ゲリラ豪雨の如き正拳連打!
カンフー、SF、ホラーという、ボンクラな我々にとって欠かすことのできない要素で完全武装した、これぞ厨二なる浪漫!
素晴らしすぎて度肝を抜かれましたよ!!
足りないのはオッパイのみ!


一体どこの洋画劇場よ?っていうナカモトフィルムロードショーのオープニングから始まって、いかにも70〜80年代風のテロップでタイトルインするこのセンス!
いまの若い衆には分からないかもしれない香ばしき懐かしさに目頭が熱くなっていると本編が始まります。

思わず「カン・フューリーかよ!」とツッこんでしまいそうになる、上下デニムで頭には赤い鉢巻を巻いた少年、彼の名は一文字ユウタ。
これまた今どき見かけないオレンジ色のイヤーパッドのヘッドフォンに、何故かカセットテープのウォークマンを携えて、少年は武術を学ぶ世界武者修行の旅から一時帰国したのでありました。
尊敬する武術家である実の兄が急死したとの報をうけての帰国でしたが、不良たちに嬲られているシラハタとクラタを助けたことから、2人と行動を共にすることに。
競馬であてたり、銭湯で汗を流したりと日常を楽しむ3人でありましたが、ユウタの帰国を知った「復讐鬼」の魔の手が迫っていたのでした。
謎の復讐鬼は、地獄の殺人空手家である改造人間13号を使い、ユウタを窮地に陥れます。
はたして、捕えられたシラハタとクラタの運命やいかに?!
そして、心身ともに傷だらけのユウタは復活できるのでしょうか・・・?!


いやはや、作り手の好きなものを全部詰め込んでやろう精神が心地よいですね。
中元監督は90年代生まれとの事ですが、完全に80年代に毒されてしまっている様子(笑)
どこを切り取っても「あの頃」の匂いが漂ってきそうです。
殺人が起きてもスルーだったり、どこかファンタジーな世界観は、まさしくあの時代の得意技でありました。
細けえことなんざ関係ねえ!
とにかく面白ければOK!
みたいな(苦笑)

特撮ヒーローもお好きだそうで、一文字ユウタがバイクで駆けつけたり、改造人間13号に命令するシステムがまさかのザボーガーだったりと、マグナム脳の琴線に触れるものばかりで、終始ニヤニヤしながらの鑑賞でしたよ!

格闘アクションは本当に目を剥いて驚くぐらいレベルが高く、下手な商業映画相手なら余裕で秒殺でしょう。
主演の茶谷さんは幼少から訓練した空手と器械体操をマスターしているそうで、しっかりとした練度の空手に体操のアクロバティックな動きが加わっており、対集団戦でもタイマンでもとにかく映えるので格好いい。
特に、正拳や蹴りの連打が自然でムーヴが綺麗。
とか思うと、クルクルと宙を舞ったりとアクションに幅があります。
ウブなルックスも懐かしの少年ヒーローものっぽくて、お姉様ウケが良さそう。
対する不良軍団も、パワーファイターやボクシングなどスタイルも多様で、役者さんは総じてキレがありますね。

そうかといってアクションやバトルだけに頼った作品になっていないのも、一本の映画としての完成度を上げている要因でしょう。
延々と動いているだけではアクションのカタログ映画になってしまいますからね。
その点、本作は前半それなりに主人公たちの絆を深めさせるための尺をとっています。
どこまでも一直線な武術バカであるユウタ。
漫画家としての夢に挫折しかけているシラハタ。
何の夢もなく、ただ毎日をぼんやりと過ごしているだけのクラタ。
この3人が命をも危険なアクシデントに身を置くことによって、それぞれ成長してゆくドラマがキチンと描かれているので好感が持てました。
綺麗に着地するオチも好き。

とは言うものの、そこは1時間ほどの中編ということもあって、シラハタ達がユウタの為に命をかける犠牲心の芽生えに、いささか説得力が足りていない気もします。
なにせ焼き殺されそうになっているわけで、あそこでクラタに吐かせないのなら、それなりの理由が必要だと思うのです。
もう1エピソード、何か必要なのではないでしょうか?
ダラダラと長くなっても本末転倒なので、もう少しだけ延長させた80分ほどの、3人のドラマに深みを増した長編バージョンも観てみたいです。

また、絶体絶命のユウタが逆転するシークエンスも、やや性急かつ唐突で、いまいちエモさが足りないかと。
必殺技はとびだすものの、あれだけストロンゲストな改造人間がアッサリとダウンするとは思えないのですが・・・
ここはひとつ、例えば改造人間が「火」に対して何かしらのトラウマがあったとか何とかでっち上げてくれれば素直に頷けたのですが、どうでしょう?

しかし、そんな重箱の隅をつつくような真似が恥ずかしくなるほど、この作品はキラキラしているんですよ。
やってることは血反吐を吐くようなヴァイオレンスなんだけれども(汗)
オジさんには眩いばかりの熱さ。
パッションをビンビンに感じるよね。
この先、プロの世界で商業映画を撮ってゆくのかもしれないけれど、のし掛かる制約なんかに負けないで「好きなもの」を突き詰めていって欲しいな。
作り手がエンジョイしている映画は、観る側にも楽しさが伝染するものですから。

マグナム的な希望としては、東映さんは「人造人間キカイダー」の更なるリブート作をもし作るのであれば、是非、中元監督を抜擢してほしいですね!
なにしろ、監督の必殺技は電磁エンドらしいですから!
誰とは言わないけれど、ジロー役やハンペン役にピッタリの俳優さんも揃っているし!
あと、「怪傑ズバット」のテイストもイケる気しかしないので、この際ナカモトフィルムに全てを任せてズバットも復活させて欲しいですなぁ〜!

・・・などと、勝手な妄想を膨らませてしまうぐらい、「一文字拳 序章-最強カンフー少年対地獄の殺人空手使い-」は大満足な面白さでした。
出来れば、「第1章-最強カンフー少年対鋼鉄の残酷殺人ペッパーくん-」から「第10章-最強カンフー青年対恐怖の殺人ショッカーゾンビ軍団-」あたりまで続けてくれて、完結記念にレーザーIMAXで一文字拳シリーズマラソン上映を開催!!なんて未来が待っていれば鼻血でそう!
もしそうなったら、たとえ老衰で死にそうになっていたって中央席ぶんどって参戦するぜ〜〜!!

You are SHOCK!!!



青山シアターにて