ネギの子供

川と自転車のネギの子供のレビュー・感想・評価

川と自転車(2018年製作の映画)
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青山シアターにて。PFFアワード2018審査員特別賞。映画の豊かさを象徴するような1本。セリフなし、音楽なし、物語もあってないようなもの。スタイルも基本的に長回しのロングショット。でも観てられるし、ついつい笑ってしまう。感情の見えない登場人物4人の顔が目に焼きつきます。

劇中では明言されないが、おそらく夫婦であろう中年の男女。彼らはなんの変哲も無い普通のママチャリに2人乗りして、自転車を進める。後ろの女は横向きのあの座り方。一心不乱にこぐ男。画面の奥から手前から、そして見えるとこも、見えないところも、縦横無尽に動き回る。

ロケーションがちょうどいい塩梅なんです。奇抜過ぎないけど、ここを走ってる自転車を撮ったら面白そう、見てられるぐらいの感覚。たぶん高低差みたいなことは意識されている。2人の目的地は、これまたなんの変哲もない土手。おそらくいつもと同じ仕方でシートと毛布を敷いてピクニックを始める。冬の夕暮れ、いつのまにか寝てしまっていた2人。起きるとさあ大変!自転車が盗まれております!てえへんだ!てえへんだ!という話。

もうひとつがおそらくカップルであろう若い男女の挿話。スカイツリーの見えるベンチからハンバーガーを食べて、ひとつしかない飲み物をさり気なくシェアする。言葉で説明しても、何一つ面白くなさそうだし、実際面白く観れない人が多いと思う。が、なんかいい。女性の手袋の外し方、何も言わない仏頂面。男が微妙に紙袋の位置を気にするところ。キャスティングと所作が絶妙で、つい微笑を浮かべてしまうような。そのあとの長回しも必見。

その後、中年の男女の話に戻るんですが、長くなりそうなので割愛。あ、夏になってる!とか、新しい自転車買ってないんだとか、お母さんがカメラにハマりだしたとか色々気付きもあり面白いです。これに賞をあげるPFFはやっぱりすごい。