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少林少女の都部のレビュー・感想・評価

少林少女(2008年製作の映画)
1.0
2000年以後に劇場公開された予算規模の大きい邦画の中でも、いわゆる底辺に君臨し続ける迷作『少林少女』。邦画史上初の本格武術映画と銘打たれた気概は空回りを続ける一方で、物語の大半を占めている支離滅裂な会話と物語の進行は観客の理解を自ずと放棄させるものである。

酷い酷いと聞いてはいましたが実際に鑑賞してみると、その前評判以上の迷作あるいは駄作の振る舞いが目立つ作品という印象で、チャウ・シンチー監督による有名作『少林サッカー』の二匹目のドジョウを狙うにしてももう少し上手くやれるだろうと溜息を吐かずにはいられない。

『少林拳を世に広めたい』と根拠なき目的意識に囚われた主人公 凛が、その会員を募る為にラクロスを始めるという時点でだいぶ見当違いな方向に話が進んでいるな━━少林サッカーは当事者達の目的と手段が一致しているからサッカーやってるんですよ。少林少女は意味わかんねぇ流れでなし崩し的にラクロスやってるんですよ━━という感触はあったのですが、そこから急転直下の展開が続々と眼前で繰り広げられるわけです。

曰く『少林拳にはチームプレイがないから、凛にはチームスポーツが向いてないよ。チームの心分かってないよ』と言われて主人公が困難に直面するのですが、じゃあスポーツ参戦の報酬として嫌々に少林拳やるような奴等じゃなくてもっと聞き分けの良い別の奴を探せばよくね?なんでお前それ言われてサッカーやってんの? 目的と手段が逆転してね?

そもそもラクロスに拘る必要性は皆無なわけで、少林サッカーほど多くの意味で追い詰められてない彼女が今の環境に身を置き続けなくちゃいけない理由なんてこれっぽちもないんですよ。その説明もされないし、元を正すとどうして凛は少林拳を復活させたいのかも曖昧なのでどういう心境の過程を経て話の中で動いているかがさっぱり見えてこない。

これは凛に限った話ではなく、この物語の登場人物は総じて"何がしたいのか"と観客目線では何も伝える気がないし、そういうフワッとした曖昧な言動だけで話がどんどん進むので困惑せざるを得ないんですよね。

このように物語前半部分のラクロス部編の適当極まる進行の時点でもかなり映画として酷いんですが、後半になって登場する闇の少林拳使いとも言うべき敵役(かたきやく)の目的も尽く意味不明であると。
少林少女的物語メソッドの悲惨な進行で迎えるクライマックス/ラストバトルは何故か宗教じみた諭しによる決着という釈然としないそれなのも訳が分からなくて、これの何処が本格武術映画なんだよと突っ込まずにはいられない。合間に合間に挟まれるギャグ描写であるとか面白味に欠ける振る舞いが目立つ個性を帯びたキャラクターの配置だったり、すべてにおいて悲惨な作品であるとここに断言します。
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