映画狂人

漂うがごとくの映画狂人のレビュー・感想・評価

漂うがごとく(2009年製作の映画)
-
ベトナム・ハノイを舞台に女性視点での性を描いたドラマ。
ツァイ・ミンリャンに通ずる「水」のモチーフの多用、秘めた欲望を携え愛を求めて彷徨う若き新妻の姿はロウ・イエ作品の登場人物にも近い(あちらほど激しくはないけれど)。
薄暗い画面が多い為トラン・アン・ユン程の映像美は味わえないが、ゆったりとした時間の流れからは湿度の高いベトナムの風景が手に取るように伝わって来る。
喧騒的なバイクのエンジン音やけたたましく引っ切り無しに鳴り続ける車のクラクション、突然のスコールが蒸し暑い雨のハノイで過ごした日々を思い起こさせる。
中国とフランスの文化が混在するベトナムだからこそ味わえるオリエンタルな空気感、唐突な日本人の登場には笑ってしまったがハノイの街並みだけでなくハロン湾の絶景も楽しめたりと観光プロモーション映画かと思うほど魅力的。
劇中で何度も出てくるチャイン(ライムみたいな柑橘類)や香草蒸し風呂のシーンは何とも神秘的で異国情緒を堪能させてくれる。
思い出補正も入ってしまうが、波間を揺蕩う小舟のような良い映画だった。
映画狂人

映画狂人