にしやん

漂うがごとくのにしやんのレビュー・感想・評価

漂うがごとく(2009年製作の映画)
4.2
Marrisonさんベタ褒めなんで思わず鑑賞。わし初のベトナム映画や。これ、ほんま傑作やわ。ええ作品は出だしからしてええっちゅう典型的なやつやな。夜の路地の一角から結婚式へのカメラの流れ。画面を替えて、女の子が食器を持って細い廊下(?)を通って洗い場に持っていくところの追尾。今度は店内を見渡せる場所に来て、母親と思しき人の後ろに立つ(母親は直接見えへん)。その母親はガラスには映ってて「花嫁にはまだ何もさせないよ」とかつぶやいている。ほんのわずかな時間やけど、観てるもんにこれから始まる物語の設定を的確に伝えてるわ。計算しつくしてるな。見事やわ。
映画の中身もしっかりしてるで。人間の満たされへん渇望や欲望を浮き彫りにしようとしてる。多分やけど、ベトナム以外の国で作ったらあんまりおもろいもんにはなれへんのとちゃうかな。映画への規制が強い国やからこそ、決してストレートに表現せんと、抑制を効かせつつ、セリフ、撮り方、演出等で観てるもんにどうメッセージするかについて真剣に考えるんやろな。主人公と小説家(この小説家っちゅう設定Good!)の会話劇は秀逸やし、主人公とチャラ男のラブシーン、ポスターのビジュアルにもなってる布を被る蒸し風呂のシーンなんかも、演出が抜群やな。ゾクゾクしたわ。それにラストも印象的やな。夫婦のこれからを上手いこと暗示してるわな。
それと、邦題「漂うがごとく」も中々意味深で、味わい深いし。主人公や出てくる人達はみな愛とか性とかの間をゆらゆらと彷徨っているんやけど、それだけやなしに、急速な近代化や欧米化による、この国(ベトナム)の文化、慣習、伝統的な家族(夫婦とか親子とか)関係の揺らぎなんかも映しだしてるわな。
それにしても、夫婦っていったいなんなんやろな?ほんま、どこの国も同じやな。
にしやん

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