ノラネコの呑んで観るシネマ

峠 最後のサムライのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

峠 最後のサムライ(2020年製作の映画)
4.0
これも2年くらい予告を観続けた作品。
幕末の北越戦争の時、東軍の長岡藩家老だった河井継之助を描く。
日本が二つに割れて争う中、小藩の自主独立を夢見た男が、現実の残酷さに敗れる話で、歴史好きなら結末まで皆んな知っている。
小泉堯史監督らしい端正な作り。
前作の「蜩ノ紀」は、過剰な説明台詞と全く人間味を感じられない登場人物に乗れなかったのだが、こちらはその様なこともなく、なかなか楽しめた。
役所広司が演じる主人公は、信念のある優秀な人物として描かれるが、政治家、軍師としての描写と同じくらい、松たか子演じる妻に送ったプレゼントとか、なぜか妻と一緒に芸者遊びをしたとか、友人の息子の絵の才能を見出し背中を押した、など、現代的な内面の豊かさを感じさせる描写が多い。
そんな彼の未来へと繋げたかった想いは、真摯に描かれている。
残念なのは、それなりに尺のある合戦シークエンスの面白味の無さ。
まあ生真面目さはこの作家のカラーでもあるんだろうけど、師匠の黒澤明のダイナミズムの一部でも受け継いでいれば。
ドラマとしては観応えあるので、ちょっと勿体無く感じる。