まーしー

峠 最後のサムライのまーしーのレビュー・感想・評価

峠 最後のサムライ(2020年製作の映画)
3.0
司馬遼太郎の同名小説の初映画化作品。
戊辰戦争の1つ「北越戦争」で官軍と戦った長岡藩の家老・河井継之助を描く。

長編で有名な司馬遼太郎の小説。その映画化の難しさを象徴したかのような作品だと思う。
2時間の枠には収まりきらなかった印象があり、説明不足だった感は否めない。
例えば、河井継之助が官軍にも幕府軍にも与しなかった理由が弱いと感じた。「小国だから」、「幕府には弓を引けないから」という言葉で片づけられている。
もちろんその理由に相違ないが、どこかあっさりとした印象を持ってしまった。

私の記憶が確かであれば、原作では継之助なりの勝算があったはず。幕府への仁義の問題だけではない。
しかし、本作ではそうした戦略・戦術まで描かれていない。また、合戦シーンもそれほど多くない。やはり時間的な余裕がなかったのだろう。
北越戦争を描きながらも、戦略・戦術の説明や合戦シーンが十分に描かれていないところに、個人的には物足りなさを感じた。

その分、役所広司が演じる継之助と、松たか子が演じる妻おすがの、二人の夫婦愛にウェイトが置かれていたように思う。
継之助がおすがに贈ったオルゴールの音色が効果的に使われていたのも印象的。
継之助への献身的なおすがの姿勢にも胸を打たれた。

このように考えると、史劇というより人間ドラマを味わう作品なのかも知れない。
私が思い描く『峠』とは方向性の異なる作品だったが、1つの映像化作品としては「あり」なのかな。