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バスターのバラードのYのレビュー・感想・評価

バスターのバラード(2018年製作の映画)
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【かわいくておもしろくてかわいそう】


とってもとっても素敵な作品!
人が生きていることになんの意味もないし、意義なんて見出さなくていいなと思える。

世界なんて不条理で、人は意味もなく死ぬし、人間の倫理観で世界は測れない。

この辺で『ノーカントリー』のDNAも感じた。コーエン兄弟の中でこのテーマって普遍で、いつも物語の中にこういう不条理がふんわり存在している印象がある。

決して報われないし、苦労の数なんて不条理の前では何の証明にもならない。
残酷なようで、キャラクターたちがとても愛しく思えるように描かれているから物凄い。

何気なく観始めて驚いたのは、6つの短編集だったこと。少し疲れたら手を止めれば良いその気軽さが心地よかった。結局のめり込んで観てしまったけれど。6つの物語が最後にリンクするわけでもない。共通するのは「西部劇」という舞台だけ。

3話目くらいから「全話で必ず人が死ぬ」という雰囲気に気付く。
それからは、今この瞬間、目の前にどれだけ美しい映像が広がっていても「誰かの死」への期待感で心が休まらない。キャラクターのどんな所作にも意味がこもって見えるし、緊張感があった。

どこかユーモラスで意地悪な『 コーエン兄弟節 』にまんまと振り回されるのもやはり心地良い。
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