わたふぁ

バスターのバラードのわたふぁのレビュー・感想・評価

バスターのバラード(2018年製作の映画)
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コーエン兄弟による西部劇アンソロジー。尺もバラバラの全6作で、ストーリーの繋がりは無し。しかし最後のストーリーで全エピソードをほのかにまとめている。

最後に死神らしき人物が言う。
「あの世へ移ることを“理解”した人間の顔が大好きなんだよね」と。
つまり“今から自分は死ぬんだ”と悟った瞬間の人間の表情が好きなんだと。
確かにそう言われて、各話に登場して呆気なく死んでいった主人公たちのその瞬間の顔は、絶品であった。老人たちの不毛な会話を延々と聞かされた後でも鮮明に思い出すことができた。
驚き、悲しみ、絶望、怒り、焦り、、あらゆる感情のなかにどこか好奇心をも内包した眼差しが美しかった。

そんな“人が死を覚悟した瞬間”を実際に目の当たりにすることは一生の中でほとんどない。目の奥の表情まで読み取ることなどきっともっと有り得ない。
だけど「死」はいつも隣にあるし、その時の光景を想像したことがあるから、どこか「こんな感じなのかもしれない」と思えてくる。

それもこれも監督や役者たちの想像力がすごいってこと。作り手は誰も一度も死んだことがないはずなのに、こちら側に手に取るように「死」を見せてくれる。

西部開拓時代とイマドキの「死」に違いはなく、ガンマンもサラリーマンも犬もカエルも最後に行き着くところは一緒なんだ、といつもとは違った角度から「死」を考えたくなる、そんな映画だったと思います。