ダイセロス森本

バスターのバラードのダイセロス森本のレビュー・感想・評価

バスターのバラード(2018年製作の映画)
4.7
西部開拓時代のアンソロジー。そしてそこには必ず死が存在する。
どんな生き方をしてきたどんな強い人間でも、いつかは死ぬということを、まるで二度か三度死んだ経験者がいるのではないかというほどリアルに、鮮明に描いている。これは面白い。
1:The Ballad of Buster Scruggs
これはポップに軽やかに、皆が「西部開拓」と言えば思い浮かべるような話をモチーフに、あっけらかんと死を描く。歌いながら昇天していく様はまるでコメディのよう。

2:Near Algodones
これもまた面白く、「first time?」と聞く呑気な死。運命に流されるまま生きた面白い男の話。これは結構好き。多分一番短いくらいの作りで、ジェームズフランコが主演なのだが、なかなか見ごたえのある面白さ。

3:Meal Ticket
リーアムニーソンがアクションしない短編。一番衝撃度が高い。アレを見つけた時から想像はついたが、本当にそれをするかと、最後のアップでは、まるで何もなかったかのように道を進んでいく男の表情を。

たくさんの人が生まれ死んでいく。

4:All Gold Canyonn
金を掘り当てようと何日も地を掘っていった老人の話。これが私は好きだ。
それまでとは打って変わり、人間が良く、人を殺したこともないような、自然とともに生きる男。フクロウとのシーンも魅力的であり、大地に「ミスター」とつけながら呼ぶのもまた面白くて良い。
「I'm old, but You're older than me! You're older」と眠りにつく老人が可愛らしい。途中の展開でびっくりする。面白い。

5:The Gal who got Rattled
兄と妹。ふたりでオレゴンへ旅に出る。結婚する相手を見つける予定の彼女は、道中、原住民と出会う。
2作目を彷彿とさせるような襲い方をしてくる原住民と対峙してしまった彼女は、守ってくれる男性から2弾だけ入った銃を渡される。彼はこういう。「もし自分があなたを守れなかったら、それで死ね。原住民は生きているお前を強姦し、更に酷いことをするだろう。」
恐怖と早とちりは、人を狂わせる。

6:The Mortal Remains
会話劇。車中、一人の男が歌う場面から始まり、ほぼひとりで会話が始まる。聞いている迷惑そうにする夫人と、不思議な人々。そして到着した先には。
扉が閉まる場面。死を覚悟でもしたのだろうか、とても面白いラストで、なかなかインパクトのある終え方だった。

人間はどこででも死ぬ、たまにミステイクで死ぬこともある、なんていう面白い死に方も見た。

人間とは果てしなく不思議で解明できない動物だと、改めて感じる一作。