来夢

華氏 119の来夢のレビュー・感想・評価

華氏 119(2018年製作の映画)
3.7
トランプについてはね、もうとんでもないことは分かってるから、ちょっとやそっとじゃ驚かなくなってしまっている(それも問題)。それよりもミシガン州知事のスナイダーのとんでもない悪者っぷりとか、共和党だけじゃない、民主党が持っている問題。銃乱射事件など、アメリカの抱える脆弱さが露見するところが面白い。単にトランプ目的だと新情報は少ないので物足りないかも知れないけれど、アメリカはもちろん、今後の日本を考えるにも十分に観る価値のある映画だと思います。
いまの日本とアメリカの違いはなんだろう。日本にもリベラルな人々はいる。でも俺はあの「アベ政治を許さない」には違和感しか覚えない。あそこに、鉛の水を飲まされたフリントの人々の怒りや、銃乱射事件の悲しみを訴えた少女のような魂の叫びは感じられない。誰が何を許さないのか、なにも伝わってこない。
政権批判は当然あってよいと思うし、政治にだれも疑問を抱かない民主主義が正常だとは思わない。人々は声をあげるべきだ。けれどそれが他人の言葉ではなんの意味もない。ましてや野党の与党批判の材料にされるだけの活動になんの意味があるのか。
って、思う俺みたいな人がいる。でも俺のそんな意見も一方的だし、きっとちゃんとした反論が出来る人も、ちゃんと自分の言葉を持って活動している人もたくさんいる。
で、じゃあこの映画、マイケル・ムーアが完全に客観的にアメリカの問題を映しているかというとやはりそうではない。明確に彼の支持するものがあるので、この映画を100%鵜呑みにしてしまうのは、それもまたトランプのパフォーマンスに踊らされるのと同じことであると思う。マイケル・ムーアの憎めないキャラクターもまた、トランプの危ない魅力と似たものなんだな。
つまり、最後にはみんなちゃんと自分の頭で考えて、民主主義と向き合う必要があるんだよ。って言うことをわかった上で、観たらとても興味深くて面白い映画だと思いますよ。
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