TaiRa

華氏 119のTaiRaのレビュー・感想・評価

華氏 119(2018年製作の映画)
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中間選挙の日に観るのが良いだろうと思って。

マイケル・ムーアの集大成となっているのも皮肉な話で、要は彼が活動して来たこの30年くらいでアメリカは何も変わってないということ。今回は突撃取材スタイルではなく現在のアメリカで起きている事象を次から次へと語って行くコラージュの様な作り。トランプを断罪する、みたいな分かりやすいものではなく、何故トランプが大統領になったかを一つ一つ検証して見せる。ムーアは選挙前にトランプ当選を予見した数少ない著名人の一人だが、もちろんそれも裏付けがあったから。ムーアの出身地ミシガン州フリントから見える問題、国民の意識などを鑑みた結果導き出されたもの。ミシガン州知事を見せて経営者出身の政治家の恐ろしさも描かれる。彼らは利益の為なら何でもする。水道民営化と汚染水の問題は日本も他人事ではない。公立校教員のストライキや学生たちによる銃規制デモなどは、トランプ本人というより共和党が過半数を占める議会や司法のもたらす結果が、国民の過半数が求めるものと大きく異なる事を表している。それらを踏まえて行動を促すアジテーション映画に今作はなっている。ムーアが見ているのは今回の中間選挙とその先の2020年の大統領選挙。古い体制を変えようとする新たなる希望も描きつつ、起こり得る絶望も匂わす。世界で最も民主的で自由だったワイマール共和国が如何にしてナチズムに支配されたかを見せる。それはちゃんと段階を踏んでそうなったという事、同じ道をアメリカが歩まないとも限らないという警鐘。2020年の大統領選挙では選挙人の配分も変わり共和党が不利になるので、それを避ける為にトランプや共和党が今後何をするか分からない訳だ。ナチが国会議事堂放火事件を利用したように、恐怖を煽って非常事態宣言なんか出したり、はたまたベトナムの時みたいに自作自演で何かやるかもしれない。あと2年でアメリカ民主主義の行く末が決まるのだ。

今日の中間選挙結果を見てもまだ希望は残ってるなと。日本もどうにかしないとヤバイんだけどね。
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