まだ知らぬ者

華氏 119のまだ知らぬ者のレビュー・感想・評価

華氏 119(2018年製作の映画)
4.0
いつも通りアポなしで取材する制作手法はご健在。ムーアは、アメリカ社会に鋭くメスを入れ、一石を投じている。「他者への思い」、この一点だけを持って孤独の旅を続ける。
彼は他のドキュメンタリストと異なり、自分独自のスタイルで取材する。アポは取らないし、周囲の目を気にすることなく、無茶な取材に挑み続ける。「常識破り」という言葉がぴったり当てはまる。常識を逸脱しないとこのような作品は出来上がらない。この作品は彼の苦労といったものが深く滲み出ている。やはりドキュメンタリー番組とは容易に制作できるものではない。

内容に関しては、一見ドナルド・トランプを批判する映画であるかのように見えるが、そうではない。アメリカ大統領選を例に挙げ、アメリカ社会を彼自身の目線で深く分析している。そして、彼はそれを視聴者と共有したいと考えている。政治や経済といった固くて難しいテーマではあるけれど、視聴者の皆さんがこれらの課題と向き合い、深く考えてくれることを彼は望んでいる。
彼にしかこのような作品は作れないとこの作品を観て肌で感じた。
それにしても広報戦略が上手い。トランプを宣伝として使い、多くの人を映画館へ誘致している。
映画館へ足を運んでも損はしない映画です。
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