ベルベー

劇場版『えいがのおそ松さん』のベルベーのネタバレレビュー・内容・結末

2.8

このレビューはネタバレを含みます

やりたいこと、目標ははっきりあったもののグダグダになってしまった惜しい作品という印象拭えず。

適度な面白さは色々な要素から保証されているはずなのに、通して観るとボンヤリしてしまうのは「おそ松さん」をどうしたいのかという根幹がしっかりしてないからなんじゃと思ったり。パロディがとか人気声優がとかではなく、テーマを掘りあぐねたような。作中でも台詞としてあった「どうして六つ子なんだろうな」ということ。

なんとか正解を見つけようと試行錯誤した様子は見受けられるんだけど、ゴールに辿り着けたかというと疑問が残る。

だから連発されるギャグの一つ一つの威力は高くても、大きなテーマに収束されない。されないから観ていて段々疲れてくる。これが同じ監督の「銀魂」と大きく違うところかも。向こうは原作で強力なテーマの幹を築いているから、ぶっ飛んだギャグも演出も目的地に収束できた。

対して本作は「おそ松くん」のキャラクターという皮こそ提供されているものの、テーマは一からこさえなくてはならなかったわけで、そういう意味では藤田監督はオリジナルは不向きな人なのかもしれない。それは同じく「銀魂」を大ヒットさせ「こち亀」などもギャグと人情のバランスを見事に成立させた高松信司監督が、「ガンダムX」では100%の力を発揮したとは言い難いことに似ている。かもしれない。

もし「おそ松さん」のテーマがしっかりしていたら、映画オリジナルのあの要素はもっと本筋と巧く絡まったかも?或いは、いっそあの要素を映画版のメインテーマとしてど真ん中に置いてしまうとか。何せそこでの藤田監督の演出力は流石の素晴らしさで、ど直球な感動ストーリーでマジで大感動させる匠の技を感じずにはいられない。

しかし、それを真ん中に据えるには、製作陣が「おそ松さん」の持つ「エログロナンセンス」という特殊すぎる魅力に些か自覚的すぎたのでしょう。本作もその無謀さには度肝を抜かされるばかりなのですが、それが一つの映画作品としての本作に良い影響だけを与えるとは限らない。

と苦言も呈したものの、上述の藤田監督の演出力をはじめとして見所もたくさんあって。何より声優陣の演技。実力派声優たちの安定感たるや。声の良さや演技力の高さは勿論、芝居の種類さえ自由自在で翻弄される可笑しみ。

特筆すべきはゲストキャラを演じた佐藤利奈で、こんな演技反則だよ!と泣きそうになってしまった笑。コロコロと芝居を変えるイケボ6人にも圧倒されたけど、終盤に出てきて全て持って行ってしまう彼女の破壊力には脱帽です。

あとはエロネタが本当に容赦ないとか、グロい時がこれまたグロすぎて引いたとか笑、突如としてぶっこまれる「BTTF」ネタとか「ナウシカ」ネタとか、色々あります。色々あるんだが、色々ありすぎた劇場版。
ベルベー

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