1ヶ月前くらいから
ずっと心待ちにしていた。
自分の中で高くあがりきった
期待のハードルを、
軽々と3段くらい超えてきた。
ホアキン・フェニックスの、
肉体、表情、全てに驚愕した。
共演のロバート・デ・ニーロの
十八番を奪うような、肉体のアプローチ。
その姿は、異形。
そして何より凄まじいのは、
彼の「笑い」だ。
絶望、悲しみ、怒り、諦観…
全てが笑いで表現されている。
今作はぜひ、字幕で観てほしい。
アーサーの声を、聞いてほしい。
限界まで張り詰めた糸が、
一体いつ切れてしまうのか…
そんな緊張感が冒頭から漂う。
そんな強迫的な空気が
「プツリ」と切れた瞬間から始まる、
地獄のエンタテインメントショー。
アーサーの慟哭は、
アーサーの孤独は、
決して他人事には思えない。
そして、ジョーカー・ライジング…
僕は戦慄し、同時に感動した。
今回のジョーカーが素晴らしいのは、
「カリスマ性が皆無」
ということだと思っている。
人を惹きつける魅力もない、
弱者としかいいようのない男が、
己だけでは制御しきれない
時代のうねりに飲み込まれた結果、
ヴィランに「祭り上げられてしまった」。
そこに恐ろしさがある。
ピエロの1人は、自分かもしれない。
ジョーカーにだってなり得る。
------
ゴッサムシティで起きたことは、
絵空事ではないように思えた。
日本でだって起こりうる。
何らかの引き金が引かれれば、
同じようなカオスが訪れたっていい。
むしろ、もちろん自分も含めて、
日本人は我慢し過ぎている。
もっとこの現状に怒っていいように思う。
そんなニッポンのジョーカーの誕生を
心待ちにしたくなるような、
黒い期待を抱かせる。
危険な、しかし現代社会の
本質をついた映画だと思うのです。
※10/4にオープンする、
丸の内ピカデリーのドルビーシネマの
先行試写会を観た。
音響もたしかに凄かったけれど、
黒色の深みがすごく印象的で、
画面が暗転するとスクリーンの淵が
まったく見えない、真っ暗な状態に。
これがアーサーの心情と
非常にマッチしていて、
心を大きく揺さぶられた。
映画をスクリーンで、
いい環境で観るって、やっぱり大事。
比較して見る意味でも、
別の劇場で、また観たいと思う。