吉田ジャスティスカツヲ

ジョーカーの吉田ジャスティスカツヲのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
5.0
はい。もう最初に申し上げますね。
ホアキンフェニックスが本年度ヨシデミー主演男優賞に確定🤡🎉

【今までジョーカーというのは、具体的な生い立ちがあまり描かれていません】でした。
過去にヒースレジャーが演じたジョーカーも、冒頭から暴力的で常識が一切通用しないサイコパス的な描かれ方だったので原点については触れられません。


今回のホアキンフェニックス演じるジョーカーは【善良な一人の男が狂っていくまでを悪趣味にも懇切丁寧に】描かれています。

本作がR15指定なのは、暴力や性描写が原因じゃなくて【いじめられ方が生々し過ぎるからが原因】なのではないかと思います。
またこれ程までに酷い人生でなくても【似たような実人生をおくっている人がたくさん居て、そんな人に悪いベクトルで火を点けかねない】のが理由だと思います🤔


まず…
ゴッサムシティが舞台なのはそうなのですが、いつものように犯罪が溢れ返ったり異形の物が裏世界を征服していない。
景気の悪さからゴミ収集車がストライキ。
町中にはゴミが溢れ返っている。
福祉は打ち切られ、貧富の格差が広がっている。

そんな街でアーサーはコメディアンを夢見て毎日を生きる。

貧乏、
独身、
友達なし、
母親の介護、
仕事先では心ない言葉を浴びせられたり、陰湿な嫌がらせをされている。
バスの中で子供に話かけ、その母親に気持ち悪がられる。

生まれた時から人生ハードモード。
生活環境を恨まず【辛くなると笑うようにした結果、すこしの緊張状態になると発作で笑い続けてしまう持病】になってしまっている。
その持病が彼をさらに孤立させる…


「タクシードライバー」のジョディフォスター抜きな設定…
あるいは安藤サクラや松岡茉優不在の「万引き家族」って例えはどうですか?
コメディアンで成功する日を夢見て、同じボロアパートに住むシングルマザーに淡い恋心を抱き日々を生きている。

「生々しい」と上記しましたが本作のジョーカーは、悪のカリスマでも化学薬品を浴びて身体に異常を起こした者でもありません。



あなたの周りに何人か居る「ちょっとイタいオッさん」なのです。




私も公開前は疑問に思っていた【なんでトッドフィリップス監督なのか?】
それは映画を観進めていくにつれて、理解に変わっていきます。

監督の旧作「ハングオーバー」で登場するアラン。
40歳を超えて実家暮らしのニート。
両親に甘やかされ続けた結果、引きこもり気味で友達はいません。
すぐスネるし、ピンチになったら泣き出すし性格はまるで子供。
実際にいそうなバカ息子を集約したようなキャラでしたね…

そのハングオーバーでは…
「イタさ」「キツさ」を笑いに変える工夫だったのが、本作では徹底的にアーサーの悲劇のような人生を助長していきます。
バットマン🦇シリーズ以上に、ハングオーバーシリーズを観てみるとより楽しめると思われます👍
同じ監督、同じ「イタいオッさん」という題材で見える景色がかなり違う…



そしてそして…
圧倒的なクライマックスに感動と同時に【見ている自分も心の暗い部分を引き出されていくよう】でかなり疲れます。

日常で起こる理不尽や苦しみが、人を鬼に変えてしまった…
ジョーカーは漫画の中だけのヴィランではなく、誰の中にでもいる。


既にアメリカでは公開に先駆けて警戒態勢がとられるのも理解できます😓
でも「ジョーカー」で救われる人間は少なからずいるのでしょう…
自分の代わりにアーサーが爆発してくれるのだから…