ハリボ

ジョーカーのハリボのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.8
【2020年128本目】

みんな、騙されちゃいけないよ!

いろいろな考察があるけど、僕は「車の上で崇められるシーンまで全てが妄想」を推したい。

原作のジョーカーは、明確なオリジンのない唯一無二のキャラクターだ。
そして、バットマンに執着している。
そんなキャラクターの過去が描かれる、今作。
見ないわけにはいかないでしょう?

だとすれば、鑑賞する側はなにを期待するか?
もちろん、彼が悪に染まるにはどれだけ悲しい過去があったかどうか、だ。

障害者で、貧困で、誰にも見向きのされないアーサーがジョーカーになる過程を描く今作。

んん?ちょっと待ってくれ。
この映画でジョーカーに感情移入してしまったんじゃないか?

これが、ジョーカーの思惑だと思う。

みんな見たいよね?俺がなんでこんなになっちまったか?気になるだろ?
そうだよねえ、じゃあこんな話はどう?

ラストシークエンスで面白いジョークを思いついたと言うアーサー。
これは今までの全てが、ジョーカーによる空想のオリジンだったことの証明だ。

ジョーカーにとってこの映画は、ジョーク。

弱者の視点から生まれるジョーカーに同情をする人、それを作る社会を批判する人、この映画を見ることによって交わされる議論、全てがジョーカーには面白くて仕方がないのだ。

こんなに狂っている俺が作った話にマジになっちゃってるじゃん?

階段の高低差がキーになる今作だが、それは空想に限っての話だ。
ラストシーンで光り輝く廊下をただただ真っ直ぐに歩いていくアーサーこそがジョーカーであり純粋な悪の道をただただ進んでいくだけなのだろう。

バットマンのオリジンに繋がる展開もご都合主義すぎる。
ともすれば、バットマンに執着するジョーカーの粋なファンサービスとしか思えない。

散々作り話説を推させていただきましたが、それでもこの物語は真理をついてる。
ジョーカーが思うジョークは、現実世界こそ最大のギャグ漫画と捉えてるからなのかもしれない。

映画の虚構とジョーカーの狂気は相互性が良すぎるなあ。
ハリボ

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