もんた

ジョーカーのもんたのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.4
「おかしい」って漢字で書くと「可笑しい」になる。
ウォッチメンやデッドプールにも通じるテーマの1つが、余りにも酷で辛い現実に直面した時、人は悲しむ事でも怒る事でもなく、冗談だと笑い飛ばす事が最良の対処法になるという話。しかし今回の主人公、本当に笑い飛ばせているのだろうか?
ピエロは所詮笑ったフリしか出来ない、本質的には悲しい存在。しかもアーサーはメイクをしていなくてもピエロそのものと同じような感情表現をする事を強いられている(ここら辺の設定が個人的には新鮮で説得力もあるしで非常に感心した)。
どんどん悲惨になっていく現実に対してピエロの様な反応をし続けた結果、彼は異常に狂う事でしか精神を正常に保てなくなってしまったのではないだろうか。サイレントコメディ映画を思わせるラストは、この話がまるで喜劇であったかのような振る舞いをしていて心底ゾッとしたし、ニヤリとも出来る。この作品を纏めるには最良のオチな気がする。監督がコメディを得意としてきたトッド・フィリップスなのも納得。
ホアキン・フェニックスは肉体的にも精神的にも頑張りすぎ、本当に気が狂ってないのか心配になってしまう。笑い方のバリエーションや情けない走り方等を通じて、ジョーカーに有り得ない程の説得力を持たせた彼の演技力に関しては、歴代ジョーカー役者とも余裕で並べる事が出来ると思う。
小ネタも本編の邪魔をせず有機的に働いてくれている。特にロバート・デ・ニーロの使い方は親指を立てずにはいられない。
決して後味の良い映画ではないが、一定の人には物凄く刺さること間違いなし。
今年のハロウィンはピエロマスク集団の暴動が起きるぞ!

p.s. 時代設定が意外と特定出来ないのも興味深い!
⇒ 1981年辺りだそうです。
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