ジーハ

ジョーカーのジーハのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.2
気持ちが憎悪感でマックスになる瞬間…。
そして、次にやってくるアーサーへの同情…
いや、彼の何かに共感してしまいそうになっている自分がいる。

そんな自分を否定したくて、なんとか「モラル感」を維持しようとする偽善者の自分がいることに気づく。

とにかく心はずっと緊迫し、震え、乱され、弄ばれていた122分。

この作品て、ほんと最低で最悪だ。
そしてとんでもなく最高な大傑作だ。

母親思いで生い立ちが気の毒なひとりの男。
持病も煩い、そのせいで差別され社会からも仕事も追われる。

あることがきっかけで彼は「悪」に覚醒する。

彼の深い哀しみ、怒り、心の葛藤、迫り来る暗黒世界、狂気…そこにたどり着くまでの展開。音楽。全てにおいて完璧。
なんて巧みなストーリーと演出なんだろう。

怒りを覚えても悲しくても…笑うことしかできない。そんな複雑で追い詰められた心情を抱えたアーサーをホアキン・フェニックスが全身全霊を捧げ演じきってます。
もうそれには、ただただ圧巻…。

「心が泣く」
彼の演技によって、この言葉の意味を心底理解できたんです。

ラストに向かうにつれ、どんどんモンスターへと変貌していくアーサーへの怒りや恐怖心を押さえらない自分も確かにいる、でも…

劇中でゴッサムシティもパニック状態。
Creamのwhiteroomが流れる…。
あぁ、、(…鳥肌)…もうどうしたらいいの。
こんな酷い状態で、何に感動してしまってるんだろ。いったい何に期待をしているんだろ。
悪の復活と崇拝…。何だこの感覚。
自分の中のモラルが麻痺してくる…

両親を殺され、暗闇で呆然とする幼い少年。
…ここでまた未来への伏線が引かれる。

…白い部屋で笑うアーサー。

エンドロールの選曲も素晴らしい。

とにかく涙が止まらない。
泣きたいわけでもないのに。
涙が止まらなかった。

自分の心も壊れたみたいに。

これ、レビューというより、、
観終わった後のそのままの感情を残しました。すごい作品にまた出会ってしまった…
今そんな気持ちです。

これを観るには覚悟がいると思います。
とても哀しい哀しい最低最悪な物語だからです。
そして正直万人には薦めづらい。
でも、興味がある方はぜひ勇気をもって劇場へ足を運んでもらいたい。

心からそう思える、メンタルに刺さる見応えのある作品です。
ジーハ

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