この作品は良いか悪いかでは表せない。
ただただ圧巻。
泣ける映画とかじゃないのに涙が出そうになった。
悪なのに悪ではない。そう思ってしまうのが怖い。
アーサーがやってることは客観的に見ると完全に悪いことなのに、「ダメだろ」と否定できない。
とにかく痛々しくて辛い。
少しずつ、見えないくらい、でも確実にハシゴが外されていく。
それにつれ当然アーサーは悲痛な叫びを上げる。
でもその叫びは声となって誰かに届くことはない。
笑うことでその悲惨な日々を耐え抜くしかない。
そして皆が注目するのはコメディアンとしての仮面を被った自分だけ、人々に笑われ続けている。
側から見たら壊れていくアーサー。
しかし実は彼はジョーカーとなっていくことで救われていたのかもしれない。
自分はたしかにここに存在して笑っている。
笑われてるわけでも笑わせているわけでもない。
自分の意思で笑っている。
これは彼にとっての救いであり、もう悪が悪ではなくなっている。
善悪は主観でしかない。
全身が奮い立った。