RIO

ジョーカーのRIOのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.3
※ネタバレ注意
まさに、サイコスリラーコメディの
大傑作。

DC作品で史上初となる、ヴェネチア国際映画祭金獅子賞(最高賞)を受賞した作品ということで、
「ワンハリ 」以上に期待が高まっていたのですが、その期待をはるかに上回るほどの、最高で最狂な作品でした。

ホアキン・フェニックスの演技が素晴らしすぎる。

人に理解してもらえない奇病に苦しみ、母に騙され、憧れの人に裏切られ、それでも夢を諦めたくない男、アーサーを、不条理な現実が追い詰めていく…
そして、彼は闇の深みへと堕ち、世間へ絶大な影響をもたらしていく。

悲しい笑顔の奥にある狂気を、彼のキャリア最高の怪演で、素晴らしく表現してました。
24キロもの減量をし、ジョーカーの狂気を表現する。
まさにカメレオン俳優。さすがです。

演技は、ヒース・レジャーのジョーカーが一番好きですが、キャラクターとしては、ホアキンのジョーカーが断トツで好き。

ガリガリに痩せ細った身体、心をえぐられるかのような切ない笑い声、悲しみに溢れた目、1つ1つが彼が背負う孤独の苦しみを物語ってました。

思わず感情移入してしまうほど、魅力的で泣けてくるほど興味深い。
そんな苦悩と葛藤を背負った、人間味あふれるホアキンのジョーカーがなにより愛おしいと感じます。

そして、悪へと堕ち、自由に舞う、カリスマ性あふれる彼の姿は、どのヒーローよりもかっこよく、魅力的。

特に、終盤は最高。
彼の、感情のままに語りかける1つ1つの言葉が、グサグサと心に刺さるかのような衝撃を生み出してました。

そんな狂気に満ちたジョーカーを主軸に、富裕層と貧困層の格差をリアルに描き、
綺麗事ばかり並べて、1つも醜い現実に目を向けようとしない、腐りきった現代社会の風刺と皮肉を、
素晴らしい音響と美しい映像表現、散りばめられたコメディとジョークをベースに表現した、アメコミ作品の歴史を塗り替えるほどの大傑作・・・




・・・と、感動していたのも束の間、すべてをひっくり返す驚愕の展開が。

病気を患ってることも、壮絶な人生を送ったことも、社会的正義でマレーを射殺し、貧困層の英雄になったことも、
全てがまさかの彼の妄想=嘘=ジョーク。

悲劇だと思って観ていた物語は、実は喜劇だったということに気がついた瞬間、ゾクゾクっとした鳥肌が、全身を襲いました…

社会派映画だの、彼に共感しただの、同情に足るべき正義があるだのと勘違いし、評論をしている僕たち観客。

そんな我々の姿を、監督=ジョーカーは嘲笑い、馬鹿にし、笑いものにしているのでしょう。

アメコミという仮面を被った社会派映画という見方もできるが、そんな社会派の評論を嘲笑うかのようなブラックコメディ映画だという見方もできる。
はたまた、1人の男が壊れていくサイコスリラー映画としての見方もできる。

この作品が被っている仮面の下にはまた仮面があり、更にその下にも仮面がある。

そして、見る人によって見方が変わり、仮面を剥がせば剥がしていくほど、どれが本当の顔なのか分からなくなる。

何重にもメタファー的構造が重ねられているような、
まさに、"カメレオン映画”。

観れば観るほど、彼のジョークに惑わされ、騙される。
まさに、この作品自体がジョーカーそのもの。
本当に恐ろしい作品です。

コメディを究極に追求したフィリップス監督による、サイコスリラー色の強いブラックコメディの大傑作だと感じました。

非常にトーンが重苦しく、思わず憂鬱になってしまうような作品ですので、アベンジャーズのような、大衆向けのお気軽エンタメ映画のノリで観ないようにお気をつけ下さい。
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