このレビューはネタバレを含みます
DCシリーズ初見でしたが普通に１つの映画として引き込まれました。
1人の男が腐った社会の中でズブズブと虚構の世界に落ちていく話
悲劇の男がいかにして狂人となったのかを描いた作品かと思ったらそんな簡単な話じゃなかった。
アーサーが初めて殺しをしてしまってから段々と狂って行く（というか今まで抑え込んでいた奥底の感情が剥き出しになっていく）様は確かに異常なんだけど、彼の持つ悲しみや吹っ切れてからの佇まいは美しくて、あのクネクネダンスも、そして悪夢みたいなラストにもつい見惚れてしまった。
あれを狂気と呼ぶには浅はか過ぎる気がして、かと言って世の中の理不尽に立ち向かう悲壮感だとかの生ぬるい感情でもない。
DC初見なもので勝手なイメージからジョーカーってもっと"悪"のカリスマ性を持つ絶対的な人間なのだと思っていたけど、思いの外最後まで人間臭くて脆さのある人物で驚いた。
"ジョーカー"はきっとあの街では誰でも良かったんだろうし、たまたまアーサーがその役目を担うことになっただけ。民衆に祭り上げられ血化粧で笑顔を作るジョーカーは目の前の喜劇を心の底から楽しんでいるようで、悲しんでいるようにも見えた
民の為、腐った社会に巣食われる街の仲間の為なんて崇高な目的で殺しをしたわけじゃなくて、自分自身の為だけに狂気を狂気で塗り替えた男は、結局最後まで自分を憐れんでいただけなのかもしれない。凄い、1人の人物に対してめちゃくちゃ考えさせられる映画だ。果たしてどこからどこまでが"虚構"だったんだろう。
普通のヒューマンサスペンスドラマかと思っていたら考察要素もかなりあるみたいでとんでもなく分厚い映画でした…次はもっと俯瞰して観たいけどめちゃくちゃ心が疲れる映画なので多分劇場ではこれっきりです…凄い映画だった
泣ける映画なんかじゃないです
ただのバイオレンス映画でもない
憧れるような悪のカリスマ映画でもない
ただただ虚しくてくるしくてやるせない作品。
※バイオレンス要素は後半にちょっとウッてなるシーンあるので苦手な方はご注意を！
