ウサミ

ジョーカーのウサミのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.5
「ジョーカー」は、なぜ「キング」を倒せるのか?


喜劇と悲劇、善と悪、生と死、現実と空想。

時に相反する二つの言葉を並べて、その「境目」を追求することがありますが、この映画は、「ジョーカー」というコミックのヴィランを用いて、それを表現してみせました。


主役のホアキンフェニックス。
彼の演技を見て、今後、彼を「彼」と比べるものはいないでしょう。

「彼」は映画全体を完成させ、そこにより磨きをかける完璧なピースとして存在していましたが、
ホアキンは「映画そのもの」として君臨してみせました。


まさに悪の大傑作。


まず、冒頭の「JOKER」のタイトルロゴでやられた。
ここから始まる悲哀と狂気のストーリーを予感させる、喜劇的ゆえに不気味なオープニング。

悲しみなのか、笑いなのか、憎しみなのか?
何物でもない高らかな笑い声。
あまりにも、無。
虚無のような笑い声が、頭から離れなくなります。

ズシンと響く音、背筋が凍るような展開で、「悪の権化」が形成されていく様を映し出します。
そして、それはやがて恐ろしい事態へ…

しかし、あの「悪のヒーロー」が完成していく様に、カタルシスを感じずには、いられませんでした。


一体、何が本当?
これは全て彼のジョーク?


彼は「自分」なのだ。
だから恐ろしい。

映画という創作物の中でいつのまにか俯瞰に立ち傍観者となっている観客を、スクリーンから手を伸ばし「あちら」へと飲み込もうとするようでした。


素晴らしかった。

素晴らしかったのに、思い起こして心に残るものは空っぽのような。

鑑賞しながら、感情を使い果たしたのかもしれません。