バットマンの話に悪役として出てくるジョーカーの生い立ちとその誕生の瞬間を描いた物語。
主演のホアキンの演技はもちろん素晴らしく、作品としての完成度も高いと思う。
しかし私が強く感じたのは、今の時代の空気との一致だ。
社会層間の格差が広がり、夢も希望もしぼんだ社会で、抗議活動や暴動もエスカレートしてきている。生きにくい世の中だ。
フェンスの向こう側のお屋敷に住んでいるウェインの家族はトランプ家の家族のように見える。
クラウンの仮面を付けた無数の人々は、あたかもインターネットの向こう側にいる匿名の傍観者であり無責任な同調者だ。
悪や狂気が生まれる土壌というのはこういうものなのだろうか。
テロリストはこうして生まれてくるのだろうか。
生よりも死が意味を持つようになったら、人はどう生きれば良いのだろう。
アーサーが救われなかったことを本当に残念に思う。バッドエンドの物語なので気持ちは晴れない。ジョーカーという囲いを作って引きこもってしまったアーサーに、もやは外の声は届かない。