きざにいちゃん

ジョーカーのきざにいちゃんのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
3.9
チャップリンの有名な言葉に「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ」というのがある。この言葉がこんな風に化けてしまうことがある、という意味でとても興味深い。あるいは、劇中でアーサーが言うように、その悲劇と喜劇は主観によってどちらにでも転ぶのかもしれない。人間の心の闇、人間同士の関係の闇のグロテスクさをビビッドに描いていて、決してテレビでは出来ない映画ならではの作品だ。
現代社会は不寛容の時代と言われる。国同士がいがみ合い、保護主義が蔓延る。ネット社会でも、虐めてもいいヤツを見つけると、皆、寄ってたかって正義という武器でフクロにする。この映画に啓蒙的な意図は無いだろうが、ある意味、現代の映し鏡のように人の心のグロいヒダを活写した芸術性のある作品だ。
ただ、毒が強くてあまりに痛々しく、鬱々とした気分になってしまうので、レイトショーで観るのはオススメ出来ない。観た後、口直しに能天気なアクション映画なんかで中和させる時間が必要なので。