beachboss114

ジョーカーのbeachboss114のレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.0
これは劇薬。とんでもない映画作りやがった。

主人公の狂った頭の中を疑似体験させられてヘトヘト。気が滅入る。途中までウルウルと共感しながら見てたけど、さすがに後半はウンザリして完全に引いた。

最後まで共感してしまう人も少なくないだろうから、自制が利かない中二病の連中や自意識過剰な「かまってちゃん」には極めて危険。信者とか模倣犯とか出そうで怖い。そして、そんな連中を正当化しかねない作品。

「笑い」もまた「共感」の一種。人が殺されても笑えないが、金持ちが殺されれば笑う連中もいる。貧富の差が広がれば、共感して笑う層はもっと増える。かくして殺人は喜劇となる。それがラストの路地裏での射殺の意味するところ。

結果的に主人公は、怒れる貧民層を笑顔にするという、皮肉な形で長年の夢を叶えたことになる。

一方で、良識ある富裕層はこの映画を見て戦慄し、自らの行いを悔い改めなければと思うはず。事実、年収3,000万で白亜の豪邸に住む私は、執事の榊原から「旦那様もお気をつけあそばせ」と戒められました。

いずれにせよ、近い未来を予見するかのような映画。完全度は高いが、決してノリやスタイルやファッション感覚だけで安易に褒めちぎってはいけません。

そのうち、何か重大な事件の引き金になるかもしれませんよ(そもそも、この程度のありふれた不幸でいちいち犯罪に走られてちゃ世話ないんだけど)。
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