エミット

ジョーカーのエミットのネタバレレビュー・内容・結末

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

観る前は、善良な男の闇落ち的なストーリーかと思っていました、白いものが黒く染まっていくような。でも観てみると、何かの拍子に出た黒いかけら(本作では銃をもらったあたりかな)に気づいて、それが大きくなっていく、白く振る舞っていた自分に黒があったこと、黒かったことに気づいていく、そんなストーリーだと感じました。誰でも何かしら人に見せずに内に押し殺している感情を持っていると思うし、それを外に出すことが悪いのか良いのかは分かりません。アーサーは元々母の世話をしながらも人々を笑わせようとコメディアンを目指す人でしたが、世の中の理不尽や人々の不満により自分の中のジョーカーに気づきそれを膨らませていきました。今までどうにもならず苦しい思いもしていた世界がジョーカーとしてなら動かせる。自分の行動に他の人が目を向ける、自分を崇める、非難する。ジョーカーという生き方で行き止まりの人生から歩み出せる。それがどこに向かっていても。彼自身だけでなく周囲の環境がジョーカーを作り出したのですね。ただの悪役ではないずっと深みのあるキャラクターでした。
終わり方や描写の構成についても、決められた解釈ではなく様々に受け取り考察できるのが素晴らしい。
アーサーというキャラクターがもはや演技に見えないほどの素晴らしい演技。