おのちん

ジョーカーのおのちんのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
3.0
21世紀版タクシードライバーあるいはキング・オブ・コメディ

世間の評価としては「ゴッサムシティの荒廃や貧富の格差が現代社会とリンクしていて、そんな社会の底辺でとことん虐げられながら自分の出生の秘密や持病とも相まって、純粋な魂が否応なしに悪に染まっていく主人公アーサーにどんどん感情移入」というのはよくわかるのですが。

オリジナリティがあるかというと、まずテーマの面では、ドストエフスキーが「罪と罰」(1886年)で貧乏学生ラスコーリニコフがその純粋さゆえに社会正義の名のもと悪徳高利貸しのオババを惨殺する話を世界最高レベルの内容で書いてしまってます。なので、社会が悪ければ、自分が恵まれてなければ、悪を働いてもいいのか?善と悪とはなんぞや?みたいなテーマは、特に新鮮味ありませんでした。(時代がやっとドストエフスキーに追いついただけ)

またストーリー面では、あまりに「タクシードライバー」と「キング・オブ・コメディ」そのままで、どれだけこの2つの映画とロバート・デ・ニーロのことが好きやねん!と言いたくなる内容。「タクシードライバー」の主人公トラヴィスが最後の最後にやる、指で拳銃を撃つポーズ、この「ジョーカー」では何度も出しすぎでかなりしつこかった。

オーマージュをやるときは元ネタを超えるのが鉄則だけど、この「ジョーカー」が「タクシードライバー」と「キング・オブ・コメディ」を超えたかというと…個人的にはそうは思えなかった。

結局、テーマもストーリーもオリジナリティがないので、「なるほど、こうなってこうなって、ビギンズ、ダークナイトにつながるのね」という納得感と、「ホアキン・フェニックスすごいなぁ」と演技に関心するだけの映画になってしまった。階段で踊る場面が一番好きです。

あと、「ハングオーバー」の監督がこんな映画を!っていう見方もありますけど、でも「酔っ払ってること」と「妄想と現実の区別がつかないこと」って、同じことですよねー。

2019.10.18
おのちん

おのちん