Automne

ジョーカーのAutomneのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.0
WWⅡ後、勧善懲悪に落とし込まれたナチスにハンナ・アレントが悪の凡庸さを唱えたが、時代は下り、現代は悪の普遍性とも言える状態になった。そうして映画「JOKER」で悪は〝共感する〟ものとして描かれるようになった。二元論で片付けてはならないが、相手側を肯定することの怖さをこの映画は提示する。
善と悪の二元論の時代から、グローバル、異文化、多様化の時代になり、マイノリティーにも光が当たるようになったとき、クレイジーでサイコである人間、倫理観の欠如した悪に共感することで、それを正当化しても良いのだろうか。
善と悪というものは鼻から存在しないというのは真理のようであるし差別はいけないが、二元論から脱してどちらも肯定したことで進んだように見えて、その実は反対側をじっくり描いただけである。そういう意味で、未だにアメリカの思想は富と貧、善と悪、白人と黒人という二元論に未だ捉えられていると言えるだろう。善と悪の間にグレーはあるし、富と貧の間には中産階級、白人と黒人だけでなく、黄色人種もいる。これらの社会風刺的問題が盛り上がることはとても良いことではあるが、多数派と少数派どちらも共感することで1番割りを食っているような気がするのは真ん中の人たちである、と思った。
この映画の構造として見られる、シンメトリーは、左右対称であるということ。善側、悪側どちらも同じものということを象徴して二元論を越えたように見えて、それはまだ3次元的な世界にとどまってしまっているのである。時代を変えるのは4次元的思考能力である。まだ足りない。時代がいつ追いつくか。
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