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ジョーカーのamのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.4
とても危険な映画。主人公の絶望や鬱憤の矛先が他者への加害に向かう過程の説得力が凄まじく、その心理描写に同情すればするほど、自分は所謂「無敵の人」の犯行を責める言葉を持たない事を思い知らされる。
ホアキン・フェニックスの演技は「迫真」なんて形容では収まらないくらい凄かったし、最初から最後まで食い入るように鑑賞して、この上なく濃厚な映画体験だった。
けれど、ジョーカー誕生シーンで否応無く高揚してしまった気持ちと、「無敵の人」の犯行とされる実際の事件の数々に対する遣る瀬無さとの折り合いが付かないうちはとても手放しで「面白かった!」と言ってはいけないような気がして、ただ後ろめたく居心地の悪い想いだけが残る。

社会から見捨てられ、もはや失うものは無く、全てに絶望しきってしまったら、もう"ジョーカー"になるしかないんじゃないか?
この映画を凌駕する説得力で「そんな事ない」と否定してほしいし、否定されるべきだけど、今のところ自分の中にも外にもその答えが見当たらない。

まあ当のジョーカーからしたら私のごとき"社会の側"の人間から寄せられる安い同情や危惧なんてクソ喰らえなのだろうし、次見るときはもっとライトな気持ちで楽しんでもいいかもしれない
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