もりりた

ジョーカーのもりりたのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
3.5
ゴッサムシティに住むアーサー
認知症の母と同居
彼自身も神経症を抱えつつ
道化師として街頭イベント広告で
生計を立てていた
不景気で苛立つ街と人々
理解されない彼の持病
強い風当たりで強まる孤独感
ある夜に彼が起こした事件は
大富豪ウェイン家との繋がりから
貧しい大衆を意図せず扇動
ピエロが反逆のアイコンとなる
一方母から語られる
過去のウェイン家との繋がり
それを探ろうとするアーサーだが
真実は彼を更に追い込む


ジョーカーはどのように生まれたか
アーサーの心情は丁寧に語られ
ある男性が苦境に陥り
追い詰められる過程に同情

しかしあのスーパーヴィラン誕生の
プロセスとしては期待度を超えず
ありがちな犯罪者の文脈で衝撃は小さい

狂気が完成したラストシーン
その残虐さに至る蓄積が今ひとつ
凄惨なモノを見てしまったという
上辺しか伝わらなかった


心情にフォーカスした分かり易い作り
彼から見た世界を感じられる

暗く湿っぽい音楽も良い
激しさがないのが逆に重みとなり
独特の雰囲気に浸ることができる

ソフィーとの出会いからその後まで
持病を具現化した見せ方は
意表を突かれて鳥肌が立った

残虐さを厭わない暴力シーン
刺々しい恐怖は十分に伝わった


悪い意味の危うさが目立つ
凶器を暴発させ慌てふためく
感情先行の無計画さ 手際の悪さ

大胆ながらも要所は抑える
ジョーカーのクレバーさと対照的

散々手がかりを残しながら
一向に捕まえられない警察
現実感がなくてストレス

怪しげに踊るダンスは
ジョーカーらしさを取って付けたよう
二面性を示す意図だとしても唐突すぎ
こちらの感情が追い付かなかった


すでに人格が固まった年齢
そこから如何にこじれて
ヴィランになるのか注目していたが

変化ポイントである母の過去
調べるにしてもなぜ今なのか
より行動力ある時に調べるのが自然

コメディアンとして受ける仕打ち
逆境を強調するシーンだが
以前からその仕打ちは受けていたはず
それでも諦めず笑いに拘り続けた理由が
アーサーにはあるはず だが伝わらない

彼が真面目だとして
ハプニングで事件を起こした際に
なぜ逃げ続けることを選んだか

荒れたゴッサムの警察事情など
不可抗力があったら納得感あるが
強調されたのは彼の自業自得さ

設定のハードルを越える展開に期待したが
その足枷を断ち切れなかった


苦しむアーサー 突発的な事件
ジョーカーとしての衝動の表れ

見せたいポイントは揃っているけど
設定との繋がりが不十分な印象でした
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