みやび

ジョーカーのみやびのネタバレレビュー・内容・結末

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

1番好きだったのはアーサーが警官に捕まりパトカーで連行されている時、市民の暴動を見た警官に「あの燃えているのはお前のせいだ」と言われて「そうだよ」「美しいだろう」と言ったシーンだった。表情含めアーサーがとても魅力的だ。「存在している実感がない」と言っていたアーサーが、「でも、いる」「そして世間もそれに気づき始めた」とはっきり理解するシーン。
ここ以外にも好きなシーンは正直たくさんある(最後、精神病院の白い建物の中、まばゆい光に照らされて踊り狂うシーンとか。泣けた)けれどやっぱり私のハイライトはここだった。

この映画を観たたくさんの人が、つまり貧乏であったり精神疾患を抱えていたり発達障害だったり、マイノリティであったり、そんな人々はアーサーに少しだけでも心を寄せずにはいられないだろう。あるいは「自己憐憫に浸っているだけ」と思うかもしれないが。虐げられた弱者として描かれてなお、ジョーカーはカリスマだ。アーサーがスーツを新調し、ピエロメイクで颯爽とアパートを出て行くシーンや最後歓声に包まれるシーンはカタルシスを感じずにはいられない。

製作者の意図はどうあれ、今の時代にこの映画が上映されたことには大きな意味があると思う。トランプが政権をとったその時ならドンピシャだったか?アーサーの居住区がブラックばかりだというところも含めて、現代のプアな白人貧困層を想起させる。この社会ではもう、アーサーのような人間はフィクションな存在ではないかもしれないのだから。
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