ユースケ

ジョーカーのユースケのネタバレレビュー・内容・結末

ジョーカー(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

【バットマン】に登場する最凶の悪役ジョーカーの誕生を描いた本作は、【サイン】と【8mm】のリアクション芸で私のハートを鷲掴みにしたホアキン・フェニックスがジョーカーを演じ、【ノー・カントリー】のハビエル・バルデムに匹敵する顔面力でヤニをキメまくるヤニうま映画。

とにかく、人生のどん底に叩き落とされたホアキン・フェニックスが、ジョーカーを使って革命を起こし、ゴッサム・シティをカオスに叩き落とす大貧民なクライマックスは必見。Creamの【White Room】をバックに警察に護送される【ダーク・ナイト】のヒース・レジャーのジョーカーをオマージュしたアゲアゲのシーンで、箱乗り&ヤニをキメてくれたら失禁していたと思います。

貧困と障害に人生を蝕まれ、人を笑わせるコメディアンになりたいのに才能がないので人に笑われるピエロにしかなれず、仕事も母親も恋人も全てを失う笑っちゃうほど不幸なジョーカーに同情しても、ドナルド・トランプを思わせるトーマス・ウェインの横暴さに政治的なメッセージを感じても、本作は最後の最後で全てジョークだったというタチの悪い作品なので、ラストシーンを理解できないうちに熱く語るのは控えましょう。ジョーカーに殺されたカウンセラーが表現しているものは本作のラストシーンを理解出来ず、映画評論家の評論を真に受け、危険な映画だと連呼する貴方なのです。
クソガキに閉店セールの看板でぶん殴られるシーンも、病気の子供の前で【幸せなら手をたたこう】に合わせて踊りながら拳銃を落とすシーンも、病院の出口専用の自動ドアに激突するシーンも、母親のカルテを奪って爆速で逃げるシーンも、父親だと思っていたトーマス・ウェインにハグしてもらおうとしたらグーパンチをぶち込まれるシーンも(【ブレードランナー 2049】を思わせるジョーカーとバットマンが腹違いの兄弟だったぬか喜び設定は胸熱でした)、目の前でジョーカーに仲間を殺された小人が見逃してもらったのにドアチェーンに手か届かなくてジョーカーにドアチェーンを外してもらうシーンも、見方を変えれば完全にコメディなのです。

本作をより楽しむために、物語の構造のベースとなったアラン・ムーアの【バットマン:キリングジョーク】、監督マーティン・スコセッシ×主演ロバート・デ・ニーロの【タクシードライバー】と【キング・オブ・コメディ】、「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇。」という名言通り、喜劇を悲劇として描いた本作とは逆に悲劇を喜劇として描いた喜劇王チャールズ・チャップリンの【モダン・タイムス】、そして、ホアキン・フェニックスがジョーカーを演じるきっかけとなった笑えないドッキリ映画【容疑者、ホアキン・フェニックス】を鑑賞しておきましょう。

最後に、「私の苦痛が、誰かが笑うきっかけになるかもしれない。しかし、私の笑いが、誰かの苦痛のきっかけになることだけは絶対にあってはならない。」というチャールズ・チャップリンの名言通り、他人をダシにして笑いを取るのではなく、自分の身を削って笑いを取る芸人になりましょう。それが本作の教訓です。