とっても面白かった。今年の洋画ベストワン にしたい！！
バットマンシリーズには何の思い入れもなく、唯一見ているのが、あのヒース・レジ ャーがジョーカーをやった『ダークナイト』のみ。これも不条理に喘ぐ(あえ)人の深淵を深くえぐってみせて印象深かったけど、今度の ホアキン・フェニックスのアーサーには苦しいくらいに感情移入させられた。バットマンシ リーズの作品と聞いて、ヒーローもののドンパチ劇を想像していたが良い意味で裏切られた。めちゃめちゃ社会派のヒューマンドラマで。ゴッサムシティも暗黒街的のダークさとア ーサーが、どんどん積み重なる苦悩で精神的にバランスを失い破壊行動に繋がっていくところも、ど こを取ってみても無駄なシーンが1つもない。アーサーの心象心理を妄想シーンと現実とを映して巧み に炙り出していて凄い。貧困に喘ぐ人々の鬱憤が発して暴動へと発展して行くところとか見てると、アメリカでの上映 に待ったが入ってもうなずけるほど、リアリティがあった。映像も素晴らしくて、光と影の コントラストが物語に深みを与えてる。細かいシーンでいくつも印象に残ったところはあるけど、その中でアーサーが母親の病院の外で タバコを吸っていて、警察の質問を受けた後、院内に入ろうとしたら扉が開かずぶつかって「出口専用だよ」と言われ るシーン。何か逆戻りできない彼の人生を暗示しているのかなと深読みしてしまった。他にも印象的なシーンが数え切れなくあって、大満足の傑作だった。
なんと言っても、ホアキン・フェニックス！繊細で、凄みのある迫真の演技には本当に魅せられた。彼が在ってこその、この傑作だと思う。素晴らしいです。
