乙郎さん

ジョーカーの乙郎さんのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
3.5
自分でも意外なくらい楽しめた。教科書的な映画といえばそれまでだが、教科書的というのはクラシカルな強度ということで、それだけでも満足。後半はその優等生具合と狂気が噛み合ってない気がするが、それもまた奇妙な味になっている。
階段、檻、鏡の使い方など教科書的で、故に狂気の域には達していない。後半の殺人が頻繁する展開において、例えば中島哲也作品を観た時に感じるような、本当は人を殺せない人が人を殺してしまったような不安定さがあるのだけれども、それもまた味として楽しめた。
あとは倫理の部分になるのだろうけど、ぶっちゃけ初見後の今は、英雄誕生譚をひっくり返した構成と、自分自身が「こんなクソな世界壊れてしまえ」と思いがちなことも含めて、純粋に楽しかったと思ったことを書き留めておく。是非についてはあとで考える。
不思議なのって、これは妄想かもしれませんよって描く時って、いわゆる教科書的な描き方から外れるようにするものだけど、トッド・フィリップスってむしろリアリズムに寄るんだよな。アロノフスキー、レフン、チャゼルと違って。
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