なっすん

ジョーカーのなっすんのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.2
DCコミックの作品や映画は昔から深く触れてこなく、クリストファー・ノーラン版バットマン3部作も見てないため、いままでは「ジョーカー」のカリスマ性だけが自分の頭に刷り込まれてたキャラ。
なので、キャラそのものをよく知ってる人からすると、純粋悪であるジョーカーにドラマを持ち込んでほしくないという意見もあるそうですが、バットマンを知らない自分にはひとつの映画としてとても楽しめる内容だった。

脳の障害を持ちながらコメディアンを目指すピエロ「アーサー」、不条理や貧富の差から“狂気”に満ちたゴッサムで暮らしながら、次第に“狂喜”に満ちた「ジョーカー」へと変わっていく。
このドラマにはいわゆるアメコミ作品と違い、「正義」と「悪」の境界線がぼんやりしている。
アーサーが精神薬を飲むのをやめ壊れるまでに、そして壊れはじめてからも、彼を苦しめた社会的悪が何十人も登場する。現実世界でジョーカーが誕生することも十分ありえるストーリーである。

そして、そこまで救いようのない暗くシリアスな展開にも関わらず、音楽やダンスが度々登場し、アーサーを見て笑う人も、嘲笑う人も、つまり笑い声が沢山登場する。そのアンバランスさがなにより不気味。そのストーリーの中心にいるアーサーは心を病み、悲しみながらも病気のせいで常に笑ってしまう。ピエロ、ピエロすぎる。
このジョーカーとバットマンの対立するストーリーも、アクション映画ではなくヒューマンドラマというスタンスを保ちつつ、ジョーカー目線で是非見てみたい。

驚かされたのはホアキンの演技力。実際、主役のわりにはあまり台詞は多くなかった役であるものの、笑い声、表情、動き、そういう演技で彼の感情がすべて伝わってくる。ダンスのキレ、警察を煽るような動き、ジョーカーへと変貌したあとの動きはまさにピエロ。その演技力もこの映画を話題にさせた要素のひとつ。
そのホアキンにスポットをあてる演出、音楽、そのすべてが美しい映画だった。
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