やまぐち

ジョーカーのやまぐちのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.0
じわじわと行き場がなくなって行き、存在がおぼろげになって息が出来なくなる感じが辛すぎた。
誰も助けてくれないし、誰も自分のことを気にしない。でも、富裕層である人間を殺したら祭り上げられる。みんなが自分を認めてくれる。
でもそれも続かないし、母親も、そして尊敬していた人物も自分を裏切って行く。
そらもう狂うしかねぇわな!!!!!という怒涛の展開で、こっちはしかめっ面で画面を観ているしかない。

人が変わるきっかけなんていくらでもあるが、それがいわゆる良い変化なのか悪い変化なのかは、最早タイミングでしかないんだろうなと思った。
「銃なんかダメだ」と言っていたアーサーが、銃で自分の存在を見せつけるのは本当に皮肉だ。

貧困層を見捨てる社会は日本でもあるし、全く他人事ではない。
しかし世界的に貧困層の苦しさや格差社会が描かれていく様は不思議で異様な気がする。

映画的には、テンポがよく2時間が本当にあっという間だった。苦しさしか描いていないが、画面に食らいつくように観てしまう魅力がある。
そして画面がずーーーーっとおしゃれ。圧倒的におしゃれ。アーサーがジョーカーになり、カリスマ性を発揮していく過程を見ているようだった。
胸躍るような楽しさは一切ないのに、ずっと小気味良い。凄い映画だ。

ホアキン・フェニックスの怪演が凄く、終盤へ向かうとどんどん目がギラギラしてくる。凄い。メインキャラが1人で、しかも映画が暗いのに2時間もってしまう。

追記:
「実はアーサーなんていう人物はおらず、最後に出て来る男(誰だか分からないがもしかしたらジョーカー)の妄想話であり、今まで見てきたものは全部嘘」という考察を読んで、なるほどそれは凄く面白いなと思った。

ジョーカーの出自は語られておらず、ダークナイトのジョーカーは適当なことしか言わない。確かに、あのジョーカーならこんな壮大な話をうそぶくこともあり得る。そして嘘を聞かされた(オチまで観てきた)私たちは、「じわじわと追い詰められ、狂気を帯びたのならそれを絶対的な悪だと否定して叩くことは難しい」と思うんじゃないだろうか。思うだろう。
しかし、それこそがジョーカー(らしき人物)の狙いであり、ただ単純に狂ってる殺人者以外の何者でもないとしたら?

私たちはまんまと騙されたことになる。殺人を正当化はできないのだ。
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