Mikiyoshi1986

ジョーカーのMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.2
きょう、ママンが死んだ。

窪田啓作がフランス文学の傑作「異邦人」の書き出しを"母親"でも"母さん"でも"ママ"でもなく、"ママン"と翻訳したのはつくづく天才的だなと思いますが、
畏れ多くもあのヴィランのカリスマJOKERの爆誕を創造してしまった、コメディ職人トッド・フィリップスの新解釈。
そして数々の名優が誇る歴代JOKERをその怪演で早々に更新してしまったホアキン・フィーニックスもまた、全くもって天才的です。

真の落伍者はムルソーみたいにチョメれる献身的なパートナーも居なけりゃ、眩しいお天道さんさえも降り注がぬ。
ただ己の不遇を呪いながら、この不条理な世界で手塩にかけて鬱屈した狂気を育むのみ。
津山の都井睦雄も、タクシー運転手のトラヴィスも、そして自称コメディアンのジョーカーも。

本年度随ーのピカレスクロマンに挙げられる本作ですが、
劇中で心底ゾッとしたのは狂気にひた走るジョーカーの動向ではなく、
貧困層のデモが紛糾する状況なんざ何処吹く風といった具合に資本家たちは悠長に資本主義体制を揶揄した傑作喜劇『モダン・タイムス』を鑑賞しながらゲラゲラと笑っている姿でありました。

また不穏なチェロの旋律でこの作品に圧倒な輪郭を与えたコンポーザー、ヒルドゥル・グーナドッティルはあのmumのメンバー!
海外ドラマ『チェルノブイリ('19)』といい、ほんと素晴らしい仕事ぶりでしたね。
mum、今年のFFKT(ex.タイコクラブ)で久しぶりに出演してくれたら嬉しいな。

Gary Glitter「ROCK & ROLL PART 2」とCREAM「WHITE ROOM」はこれで完全にジョーカーのイメージソングに定着です。
Mikiyoshi1986

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