GreenT

ジョーカーのGreenTのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
2.5
アーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)は精神病を患っているが、貧乏なので健康保険がなく、社会福祉に頼ってセラピーを受け、処方箋を貰っている。病のせいなのか少し変わり者で、ピエロの派遣会社?で働いているが、同僚や上司からも好かれていない。彼は本当はスタンダップ・コメディアンになり、みんなを笑わせ幸せにしたいのだが、人と笑いのツボがズレていたりして、こちらの方も上手く行かない。

閉店セールの宣伝をしている時、ストリートでおどけた表情を見せるピエロは、心ない若者たちの暴力の対象になる。ケガをさせられ、看板を壊されたのに、その責任を負わされるアーサー。そんな悪状況を利用して同僚は、アーサーに護身用の銃を無理やり売りつけ、アーサーはそれをピエロとして小児病棟で踊っているときに落としてしまい、クビになる。

社会福祉制度が廃止になり、アーサーはセラピーも受けられなくなり、処方箋ももらえなくなる。家には介護が必要なお母さんがいるのに、仕事もなく、そんなアーサーを誰も助けてくれない。彼が憧れるトークショウ・ホストのマーリー・フランクリン(ロバート・デニーロ)は、アーサーのスタンダップのビデオを番組で流し、バカにする。

アーサーは、アメリカの貧困層が直面している問題を全て抱え込まされています。貧困な上に精神病を患っていたら、治療の道は皆無。なんの保証もされない肉体労働しか残されていない。中流や上流の金持ちたちは、そんな貧困層の人たちが困っているのを笑って見ているだけで、助けない。

そういうアーサーの辛い状況は良く分かった。しかしこの映画は、アーサーが反社会的な犯罪者になる「要素」を羅列しているだけで、アーサー・フリックという「キャラクター」がどういう人なのか良く分からない。

ワーナー・ブラザーズは、当初マーティン・スコセッシを監督、レオナルド・ディカプリオ主演でこの映画を撮りたかったらしいのですが、スコセッシ監督は『アイリッシュマン』、ディカプーは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』で忙しくてできなかったそうです。ユーチューブで映画レビューをしている人たちの中には、この映画は『タクシー・ドライバー』や『キング・オブ・コメディ』からのパクリも多い、と言っている人もいたので、DCコミックの伝説的ヴィラン、ジョーカーを、『タクシー・ドライバー』のトラヴィスのように「こういう反社会的な人が出てくるのは、社会自体が腐敗しているということなんだ」って感じに描きたかったのかな。

これでもかこれでもかと追い詰められて、だんだんと狂気と化していくところを見せたいのだろうなと思うのですが、だんだんと積み重なって凝縮されていく盛り上がりがないと思ったんですが、どうでしょうか。最初と最後のアーサーに、あまり差がないような。

ホアキン・フェニックスは、自分が有名人である特権を逆利用して、恵まれない人や搾取されている動物たちの声を世間に伝えようとしている人のようなので(映画賞のスピーチなどを聞くと)、そういう目的でこの役を引き受け、一生懸命演じているとは思うのですが、元々きちんと作り上げられていないキャラクターをどんなに一生懸命演じたところで、響くものはありませんでした。

脇役のキャラも弱いなあって思いました。憧れるトークショウ・ホスト、恋するシングル・マザー、介護しているお母さん、みんな印象に残らないキャラ。アーサーがコメディをやるシーンも、「ウケないギャグ」がブラック過ぎて、みんなアーサーの狂気に凍り付く、みたいんだったら面白かったんだけど

「小さい時、コメディアンになるんだ!って言ったらみんなに笑われた。でも今は誰も笑わない!てへっ」

みたいな、ヘタクソな脚本!マーリー・フランクリンのショウに出演するシーンも、セリフが単に説明的で本当につまらなくて、何度も寝落ちしてしまった。

映像や音楽がすごくいいって言っている人が多かったのですが、私は色のトーンもずーっと同じで飽きるし、音楽もオリジナリティないし、衣装もパッとしないなあと思いました。

残虐なバイオレンスのシーンがかなり批判の対象になったそうなのですが、アーサーが手にかける人たちはみんなイヤな奴か、理由があるので、私にはアーサーが「狂気と化した」ってところが伝わってこないんですよね。恋して幻覚を見ていたシングルマザーを殺したら「あ、完全におかしくなっちゃった」って思えるんだけど、その辺分別があるというか。

アーサーのお母さんの設定も、なんかぼわっとしていて良く分からない。白人特権階級におもちゃにされて捨てられて、本当のことを言っているのに握りつぶされているのか?それとも狂言?

先に言及したとおり、社会で虐げられている人達の問題をストーリーに盛り込んでいるのですが、羅列しているだけで、それを使ってどんなメッセージを送りたいのかは全く分からないし、かと言ってそういう難しいことはいいから、エンターティメントだよ!でもなく、どういう楽しみ方もできない映画でした。