のりまき

ジョーカーののりまきのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
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トッド・フィリップス、お前か。
いつか世界がホアキンを無視できなくなる日が来る。そう思ってはいたがそれを撮るのがトッド・フィリップスとは思わなかった。
「とあるシーンを撮って、待てよ、アーサーって思ってたのと違う。もしかしてこんな奴じゃないの?と気付いた」とインタヴューで語った監督。既に撮ってあったシーンを山ほど撮り直したそうな。つまりそのシーンのホアキン演じるアーサーが監督の予想を超えてしまったということだ。この映画を端的に表した言葉だと思う。
アドリブで撮られたというシーンが、やせ衰えた丸い背中が、印象的な笑い声が、この世に存在しない男を生々しく立ち上がらせ、この一般的とは言えない内容の作品を普遍的ななにかにしてしまった。
監督も見事にそれに応えた。暗く沈むのではなく、白い光に消えていく意識。暗黒に染る。闇に堕ちる。今までのヴィランの表現をぐるりとひっくり返して見せた。
賞はこれを無視することは出来ず、それでいながら興行主は暴動を誘発することになりかねないと二の足を踏んだ。「たかがコミックベースの映画」に。
様々な要素の中で重要なのはグディナドッティルのオリジナルチェロ曲。ホアキンの骨となり肉となり共にアーサーを創出したその響き。思い出すだけでもう一度確かめたくなる。そうしてこの作品は残る。
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