NAO141

長いお別れのNAO141のレビュー・感想・評価

長いお別れ(2019年製作の映画)
3.6
『湯を沸かすほどの熱い愛』や『浅田家!』等、家族(人々)の絆を丁寧に描くことで有名な中野量太監督作品。
認知症を患った父とその家族の7年間を描いた切なくも笑顔になることが出来るヒューマンドラマとなっている。

認知症によって自分が〈父〉であることも〈夫〉であることも忘れていってしまう昇平。それでも東家の人々は昇平を〈父〉として〈夫〉として扱い、接し続ける。認知症に関わらず「自分の事は自分ではよくわからない」とも言うが、ある一人の人間を〈その人〉たらしめるもの、それは他者との〈つながり〉であり、その〈つながり〉によってのみ自分という存在は成立するものなのかもしれない、とも感じた。

人間は年を取るとまた子どもに戻っていく(二度童子)などと言われることがあるが、物語冒頭で遊園地に迷いこみ、幼ない子ども達と遊ぶ昇平は子どもに戻っているようだった。これから人生が始まる子ども達と人生を終えようとする老人が同じ童子として楽しい時を過ごす、その一瞬ともいえる時間を映すシーンがとても良かったなぁ。
※遊園地のアルバイトスタッフとして、さらっと藤原季節が登場したのも良かった笑。

本作のような家族の繋がりは本当に素晴らしい。しかし認知症を患う本人とその家族には苦悩があることもまた事実。
本作と同じように認知症を患う方を描く作品としてアンソニー・ホプキンス主演の『ファーザー』があるが、両作品を観ることで認知症に対する理解はさらに深まるような気がする。
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