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長いお別れのtaruponのレビュー・感想・評価

長いお別れ(2019年製作の映画)
4.4
中野量太監督は「湯を沸かすほどの熱い愛」もすごく良かったけれど、これも期待を裏切らない作品だった。
東家の家族4人がとても良い。中でも山崎努さんがすごすぎる。7年間を2年ごとに追っているのだけれど、少しづつ失われていっている様子がリアルに感じられられる。松原智恵子さんは、上品で若干浮世離れした感(良い意味で言ってます)もある様子が遺憾なく発揮され、それが全体の重苦しさの軽減につながっている。公式サイトのどこかに松原さんの世界に監督が近づいて行ったとあったけれどすごく納得(笑) 蒼井優さんはこういう役をやらせた時の自然さが何よりすごいなって思うし、竹内結子さんは自分の生活にある種行き詰った感がある主婦の感じがでている。後半の夫とのやりとりはなかなか良いです。

アメリカでは認知症のことを「長いお別れ」とも言うって初めて知った。私の周りは幸いにして、認知症の人はいなくて、でも、知人から、そしてメディアを通して聴く認知症に対しては、自分がなっても親がなっても怖い、できることなら避けたい気持ちも強い。
でも、東家のようにあんなふうに父や夫の認知症を受け止められたら、すごく温かくていいなと思うし、反面自分はあんなふうに受け止められるのかとも思う。(介護のすごく大変な部分は全面に押し出していないから)
でも、病気は悲しいことではあるけれど、少しづつ失われそれでも残っていくモノもある中に、その人の本質だったり、その人の中のこれまでのキラキラしたかけらが詰まっていることが伝わってきて、そういうものと少しづつ向き合いながら長いお別れをするというのも、あっという間に大事な人を亡くしてしまうことと比較したらある種の救いもあるのかもとも思えた。
また失われたものはたくさんあっても、父に受け止めてもらいたい気持ちは残っていたりするものなのだなとも思った。
孫息子の崇と祖父との関係性は、なんかほっこりしてい良いなと思う。
娘や妻たちとは、失われていく一方だけれど、祖父と孫との間では認知であったとしても新たに温かな交流が生まれていっている。

あと、これはいろいろな家族の形の話で、お互い支えあいある種の依存関係にもある関係(東家) 個人なを尊重し家族の中であっても一歩引いて見守る的なスタンスをとる長女マリの家族(建前的には理想だと思うけれど、マリ自身が自立しきれていない部分を抱えフラストレーションを貯めていく)その他にも、フミの恋人の家族などが登場する。
何が良くて、何が正解かではなく、それぞれの関係性のあり方が興味深かった。

最近、親族がなくなったり、年齢的にもすごく身につまされるテーマであることもあり、より胸に響くものが大きい作品だった。