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長いお別れのMKのレビュー・感想・評価

長いお別れ(2019年製作の映画)
4.2
掛け違えたボタンを手探りで手繰り寄せるような優しい雰囲気と思いやりに溢れた湯を沸かすほどの熱い愛からの久しぶりの鑑賞。

長いお別れ…英語ではそういうんだ、認知症を患った人と家族との別れを。

作中で何度となく用いられた「遠い」と「帰る」という表現、
遠く海外で暮らす家族、遠い過去や未来、還るべき場所、記憶、家族。
満ち足りていたと思い込んでいたものを失ったり手放すことへの不安、恐れ、寂しさなどなど。
前作とはまた違うアプローチではあったけど、遠くにいっても繋がっているもの、帰ってもまた還る場所や記憶があるということを透かし絵のように露わにしていく雰囲気はとっても好きな感じ。愛情っていう表現はそういうことを総じて呼ぶためのものなんかなぁなんて思っちゃうくらい。
前作ほど涙に明け暮れることはなかったけれど、メリーゴーランドのシーンやうつ伏せと称して伴侶にもたれかかるシーンなんかはなんとも泣けた。

突然死…これは短いお別れになるんだろうけど、あいする人との永遠の別れはどんなもので何が自分にとって受け止めやすいのだろう…。

愛する家族の心がどんどんと遠ざかって、交わることがなくなっていってしまう現実を受け止めるのはとても辛そうだけど、この作品のように希望もあったらいいと思った。

でもこの夫婦は本当に素敵だった。
何か特別なことも人と比べて自慢できるようなことがなくても夫婦は幸せになれるだろうなと実感。

あたたかい場所を探し泳いでた
最後の離島で
きみを見つめていた

同じリズムで揺れてるブランコで
あくびしそうな
きみを見つめていた

夢じゃない 孤りじゃない
きみがそばにいる限り

いびつな力で 守りたいどこまでも

汚れない獣には 戻れない世界でも

…感想書いてたら草野クンの歌詞がなんか頭に浮かんだ。
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