こたつむり

インスタント・ファミリー ~本当の家族見つけました~のこたつむりのレビュー・感想・評価

3.6
♪ どんなことも越えてゆける
  家族になろうよ

家族は“なる”もの。
同じ時間を共有し、想いを積み重ねて、絆を築くもの。血のつながりがあろうとなかろうと、誰だって最初から最後まで“他人”なんです。何もしなければ。

だから、古今東西、家族の物語は廃れません。
今日も明日も明後日も。何処かで家族ができて、何処かで家族が終わるのです。

そして、本作もそんな一作。
養子を迎えることが頻繁に行われるアメリカならでは、の物語ですね。さすがは「人種のるつぼ」と呼ばれる国。日本とは違う価値観が興味深いです。

それは主人公の夫婦の造形に顕著。
彼らは徹底的に“善人”なんですが、その反面で浅薄で衝動的な部分が鼻につくんですね。この辺りはある意味でリアリティの塊。日本とは価値観が違うのでしょう。

その代わり、子供たちは記号的。
長女のリジーは反抗的な思春期ですし、フアンは自信が持てない男の子、リタは末っ子丸出しのわがまま娘…と“困難さ”が分かりやすいのです。

また、それらを解決しないのもアメリカ的。
本当の意味で「多様性」なんでしょうね。長所だけではなく短所も含めての個性。大人の目線では色々と問題があったとしても、それを矯正することはないのです。

ゆえに物語として成立します。
正直なところ、物足りなさを感じたのも事実ですが、それは子供の個性を尊重しないことと紙一重。勿論、親の立場としてはダメなことをダメと教えないといけないんですけどね。その配分が難しいです。

親だって最初から親じゃあない。
なんてことを言える資格が僕にあるのかどうかは…あと10年くらいしないと分からないと思います。未だ暗中模索。日々精進。ふう。

まあ、そんなわけで。
基本的に“良い物語”なので生温く捉えた方が吉。完璧な人間がいないように、完璧な家族なんてある筈もなく。寧ろ、歪な方が色々と面白いのだと思います。当事者は大変だけど。
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